Magazin&Champion-D-

□分かんないよね
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『みょうじさん、そろそろ帰らないと、』



そう言って、駅まで送ってくれようとする多田野くんは本当に律儀で



『そんな毎回送ってくれなくて大丈夫なのに〜』

『いや、俺が手伝ってもらってることで遅くなってるんだし、もう暗くなるのも早いし、何かあったら…』

『ほんと真面目すぎない!?』



なんて言って笑うのも、悪くはなかったんだけど
『俺が気になるだけだから』って言われたら、じゃあ言っても仕方ないかって感じで。

鳴先輩がそれを利用して買い物頼んできたりすることもあるし
私も一人で疲れた〜ってダラダラ帰るより、誰かと話ながら帰る方がラクだなーってのもあるから
最近はすっかりそれが当然のようになってて

全然それは嫌じゃないし
寧ろ 視線が全然合わなかった時より 最近は色んな表情が見れて面白いし、なんか前より居心地がいい気すらしてたりして。

まぁ…だからか鳴先輩以外からも付き合ってる扱いされること増えたけど

二人でいても、今までそんな話全然してこなくて

野球のこと、野球部のこと、鳴先輩のこと、
ほとんどがその辺りで
あとはテレビの話とか、テストのこととか The友達との会話〜って感じだったし

そうして



「じゃ、今日もありがと!また明日ね〜!」



って軽く手を振って、改札を通って、いつも使う乗り場に向かうのがいつも通り。



その途中で

普段は全然そんなことしないんだけど
今日は気まぐれに振り返ってみたら、

そこにはまだ
多田野くんが立ってて



その顔があまりにも優しかったから、





それは、

好きかも





なんて思って。



ちょうど来てた車両に乗り込んで、じんわりあったかい座席に座って
落ち着いて

考えてみても

いつも、ああやって見送ってくれてたのかなーって思うと
うん、いいなぁって思う。

その『良さ』は
そんなことしてくれるんだー、っていう

なんとも言えない嬉しさっていうか
ふわっと心が温かくなる、やさしさみたいな感じ。


つい5分前までは何も思ってなかったのに
『あ、いいかも』って思ってしまうと一瞬で。

多田野くんが彼氏だったら
なんとなくだけど超大事にしてくれそうだなーとか
そんなことまで考えてみたりもする。

まぁ、好きっぽい子居るみたいだけど…
まゆゆみたいじゃなくていいなら可能性あるよねー。
私、多分一番仲いいし。



うん。
真面目だし、何でも頑張るし、
突然カッコイイこと言ったりするのも面白いし
てゆーか普通に 優しいし

あと、振り回してもついてきてくれそうなとことかも いいかも



なんて頭に浮かぶままに、

ゆっくりと周りの人を見回して
鳴先輩達とか、クラスメイトとかを思い出してみて

比べてみると、なんだか少し





特別な気がして





マフラーに隠れてこっそり笑った。



鳴先輩が知ったら『今更何言ってんの!?』って言われそうだけど








んないよね



いつ何が『きっかけ』になるかなんて。









→12.足りないんだ


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