Gerade-D-

□せやけど
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やっと先頭に追いついた思たら

箱学が一人ずつ落ちてって

700m近く離されて


ここからや、て ここが最後の役目なんやて。
今日の最後のゴール獲るために、
全力で引いて、運んで、箱学追いついて
センパイらに、エースに、ゴール託すんがワイに出来る精一杯やと思てたのに


引かせても、切り離してももらえんくて


与えられた役割が





『オレたちの背中を見届けろ、山の手前まででいい』





見守るだけ、で





『……絶対優勝するんで、ちょっとだけ待っとって下さい』



心さんにあんな啖呵切っといて、結局ワイ
このインターハイで、たいしたことなんも やってないやんけ。
約束守れたとしても、こんなん…なんも





「見て、すごいよ」





そう、小野田くんに言われて
顔上げて、初めて 気付く。
その背中の、



与えられた役割の、意味に。







オッサン、

見てますよ。
  全力で引く その背中、

見ましたよ。
  箱学に並んだ その走り、



見せてもらいましたよ。オッサン、





クソカッコエエっス!!





オッサン、
覚えとりますか、あの日 ワイに山登れ言うたん。
あのアドバイス、今メッチャ感謝してますわ


オッサンが根性で箱学並んで託した、
金城さんが膝痛めても諦めんとワイらに託してくれた、

このジャージ、



この登りで、





次は、ワイが派手に魅せたるわ!!





「ワイが浪速の赤い弾丸!!天才ロケッター鳴子章吉や!!どかんかいおるああああ!!」



いくで、箱学サン…追いつかせてもらいますわ、

魅せて!
  湧かせて!
 速う!
   派手に!!





ワイの最速派手な、片道切符の特急列車でな!!





箱学追いつくまで、誰にもこの先頭は譲らん。
何にぶつかろうと
視界狭なろうと

絶対にワイが追いついたる。

あたまもクラクラしてきたけど、
足は動く!
白線は追える!!

限界まで、限界超えるまで、走ったる

オッサンと金城さんの走り、繋げられるんやったら、
心さんとの約束守るためやったら、



「意地を張るな鳴子!!下がれ!!」

「オイオイ スカシ、そりゃ誰に言うとるんや。ワイは鳴子章吉やで?意地?」





限界なんかくそくらえや





「そんなもん張ってナンボやろ!!」



このカーブの先に、おるんやろ、ハコガク!

その先のゴールで、待ってくれとるんでしょ、心さん





けど、

すんません


リタイアするつもり、なかったんすけど
ハコガクさんらのビックリ顔も…もう目かすんで見えへんので、ちょいと、休んでいきますわ。


スカシ、小野田くんも…3人でトップゴールするて、ワイが言い出したのにな

すまん、



「その約束は…守れそうに…な、いわ、」



スイッチ切れたみたいに落ちる体を
支える気力も、危ないと思う思考も、もうなんもない。

ごっつい充実感となんもかも限界なんで、やっと休めんのかて思うくらいや。



スカシ、小野田くん
ワイらのゴール、かわりにたのむで


1位、獲ったってや。



「行け…総北…」



このインハイ…チームのために、約束のために、最後やっと
まともな役割果たせてよかったわ。










けど



あの人が待っとるゴールくらいは、この目でみたかったな、










→15.いつか


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