Gerade-D-

□吹っ飛んどって
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6人揃って、箱学と京伏に追いついて、
最後アシスト、スカシにジャージと気持ちと託して走って…
結果は、2位やった。

テント戻ってみれば、金城さんヒザ痛めとるし
悔しがる暇もないまま足切り見せられて、覚悟決める。


明日が最終日、最後のゴール…今日の借りは明日返す!!


そう決めて、



旅館戻って、風呂済まして、昨日と同じように自販機で飲みもん買って、
頭に浮かぶんは 気負ってんのか、
明日は、明日はって そればっかりが回っとる。



「章ちゃん!」

「おわっ!…心さん」



今日はいつも通り、勢いよく飛びついてきた心さんに現実に引き戻されて思い出す。

せや、明日までに言うとかなアカンこと、あるやんけ。



「お疲れさま!章ちゃん、今日は…」
「すんません!心さん!!ワイ、約束守れへんかった…約束、明日のゴールまで待ってもろてええすか!?」



そんなワイの言葉にきょとん、とした後 心さんは首を横に振って笑う。



「…約束、6人でゴール、してくれたよ?だから、ありがとって言いに来たんだよ!」



分かっとる、昨日の約束は
オッサンを置いていかんといて欲しいて、そういう意味やったんやろうけど


それでも、



「ワイはゴール獲るて、約束しました」

「…うん、じゃあ、待ってる!」



まっすぐ心さんを見たら、分かったて頷いて。
それ見て明日こそは、思たけど。
それと同時に、言いようのないもんが残っとって



「…章ちゃん?」

「あと…」

「?」

「…ワイ、オッサンより頼りないかもしれへんすけど…」



ワイにこんなん言う資格ないかもしれん、けど、
今のままやと、明日思っきり走れへん気して ためらいながら口を開く。



「平気なフリすんの、やめて下さい。しんどいとか、つらいとか、そういうの…フツーに言うてください」

「、」



ワイは、彼氏でもないし、ずっと一緒におった幼なじみとかでも何でもない
これはただのわがままやて、分かっとる。
そんなん知らんて言われたら、それまでや。それでも、



「昨日みたいなんは、」



今、頼られてへんくても、ウソでも適当でもええから
うん、て言うてもらえたらそれでええと思っとった。



「章ちゃんは、頼りなくないよ!」

「!」

「章ちゃん居ると元気でるから…だから昨日会いに来たんだよ?」



せやけど、それはちゃうかったみたいで



「明日も元気で応援してって、6人が当然って、言ってくれたのすごくうれしくて」

「……」


「今日だって、章ちゃんが約束してくれたから頑張って応援できたし、」

「なら、ええんすけど、」

「だから、フリなんてしてないよ!心配してくれたのも嬉しかったんだよ!」

「あー…」

「ぎゅーってして、顔見たら安心し」
「ああああ、すんません!ちょっとすんません!!ワイが悪かったんで!分かったんで!もう絶対言わんので待って!ワイの方が恥ずかしすぎて死ぬ!!」



頼ってくれとったことと、それに続く言葉がハズいので こっちは完全にキャパオーバーや。
待って言うてんのに、心さんは拗ねたみたいな顔してるし何やねんもう!



「…うそじゃないんだよ!」

「分かったんで!!ホンマに!!」



「あはは、鳴子がここちゃん怒らせたー」

「!!!」

「言っただろ、怒ると面倒くせぇってよ」

「ぐっ…!オッサンらどっから…!つか、これ怒ってんかい…!」

「クハッ!顔真っ赤っショ」



後ろ振り向いたら、いつからおったんか知らんけど、オッサンと前髪先輩と巻島さんがおって。
なんでいっつもこういう時ばっかり…!



「あああも゛ー!!センパイらどっか行って!?」

「…私も?」

「ち、がっ…!あ゛ーもうっ!!ワイが部屋帰る!!」



心さんの間の抜けた返しに
もう何も考えられへんくて、ヤケクソ気味に部屋への道を辿る。



「章ちゃん!」

「もー!!なんすかっっ!!」





「約束ね!」





振り返って、心さんが笑っとれば



そんなん、答えはひとつしかあらへん。







「トーゼンでしょ!!!」







「ヤケクソだなァ…、鳴子のヤツ」

「耳まで赤くなってんぞ、アイツ」

「若いっていいよねぇー」

「2つしか違わねぇけどな!」





部屋への道すがら、

あの人ああいう風に怒んねや、とか

拗ねた顔も可愛ええとか、

そんな風に思っとったんや とか。なんかもう、色々たまらんくて



気ぃついたら、変な気負いとかそういうん全部










飛んどって



明日は思いきり派手に回せそうやな、なんて思いながら部屋の扉を開けて布団に飛び込んだ。










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