Gerade-D-

□この先に、
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超ロングダウンヒルに入って、なんとか巻島さんと二人 チームに合流した。
オッサンのことは、正直なとこ、厳しい…、と思う。
どこまで落ちとるか分からんし、集団上がるのもめっちゃ根性いる。しかも下りの後は平坦…小野田くんにはちとキツいコースや。けど、
…それでも、ワイは信じて待っとるからな、小野田くん!


その間、ワイはワイの出来ることを…
オッサンの代わりにこの平坦引いて、少しでもトップに追いついとく!



せやから、



これ以上ポジション落としてられへんねん!!
熊かゴリラか知らんけど…ワイが先頭引いてて好きにはさせん!そう思ても4人と6人じゃ数で劣勢や。ローテしようにもスカシの様子もおかしい。

くそ…!折角小野田くんとオッサンがこっち向こうとるいうのに、このまま抜かれたら合わせる顔ないで…!



「鳴子下がれ、足を休めろ。今から、オレが引く!!」


「!?何言うとるんすか金城さん!!」



確かにずっと引きっぱなしで足ヤバいし、守らなアカン約束もある、


この状況で手段選んどれんのも分かる、



「闘うために出来ることがあるなら それをやりきる。たとえエースがチームを引くということであってもな」





このまま抜かれるくらいなら、そう思う、



せやけど







「それが、チーム総北の走りだ」







その言葉聞いたら、もう何も言えんなる。



こういうんが、覚悟…いうやつなんかな


3年て、やっぱすごいわ。





そのまま金城さんの引きでゴリラのチーム引き離したら、給水所のテントが見えてきて

心さんのことが気になった。

オッサンのスタート見とったはずやから、しょげてへんとええんやけど…


なんて、



「章ちゃん!頑張って!」



いつもみたいに笑って声かけてくれる心さん見たら、実感する。





そうや。

この人も、3年なんや。





これが 平気なフリなんかどうかは、今のワイには分からん。

けど、とにかく

メッチャやる気出たで!!



「約束!待っとってや!!」

「…うん!!」



「金城さん!お願いします!!必ず、先頭に追いついてください!!」

「ああ!!」








「…よかったんすか、あんな軽く返事して。このまま追いついたとしても、数の優位で勝負出来ひんかもしれんですよ」



ワイは負ける気なんか更々ないし、金城さんらも勿論そうやろうけど、一応テントんとこでパーマ先輩に応えとった言葉の真意を確かめる。



「4人で追いつく気はないさ…だろ、巻島」


「…ゴールまでの残り40キロは、登りだ!登りの追い上げで、小野田が追いつかないわけないショ!」


「…お前も何か約束があるんだろう?」


「カッカッカ!なんや、バレてたんすか!……6人でゴール獲る!そういう約束しました!!」


「クハッ!んだよ鳴子ォ、やる気満々じゃねーか」


「トーゼンでしょ!!」


「フッそうだ、…総北は6人揃う!!全員揃い次第、前の2チームの追撃を開始する!!」













そこから登り入って、もう10キロくらい先行したか…ゴールまであと、30キロ…もうそろそろ仕掛けるタイミングとしては厳しなってくる頃や。


二人とも…大丈夫なんか、


てそう思う前に 聞き慣れたアホみたいにデカい声が後ろから聞こえた。
ホンマに…なんやねん!めっちゃ元気やないすか!!



「戻ってきたぜ!チーム総北!」

「ショオオ!!」

「田所!!…小野田!!」

「金城さん!只今全員を連れて、チームに合流しました!!」

「小野田くん!!…正直…ムリかと思ったで…!メッチャ、大変やったんちゃうか!!」

「う、うん…」

「おおきにやで!小野田くん!!」

「いや、あの、僕は本当…全然…!」



ホンマ、ありがとうやで小野田くん。
6人揃った。これでワイも、約束守れる。

こっからが、全力や。



「つーか遅いっスわ、オッサン!!何止まっとんすか!」

「うるせーよ」

「…心さん、ゴールで待っとりますよ」

「…だろうな」



そう言うて小さく笑うオッサンに、
やっぱり、負けたないと思う。



「…なんだよ」

「別に!何も!!…ワイも約束しとるんで!オッサンがまたヘバったら、ワイがゴールまで引きますんで安心して言うてくれてええすよ!!」

「約束か…。アイツ怒ると面倒くせェから、もうヘバってられねぇな」

「せやったら最初からヘバらんとってくださいよ!!」


「…お前、アイツから何か聞いたのか」


「アイツて誰すかー」

「あぁ!?分かって言ってんだろてめェ!」



分かっとりますよ!そんくらい!
何が、『何か』や。
何も言うてもらわれへんかったワイへのイヤミか!?

て、今はそんなんより、先やることあるやろ。
しゃーないんで今は流したりますよ。



「…何も言わんかったですよ、心さん。」

「…」

「ただ!!6人でゴール獲る約束しとるんで、こっから本気で回してくださいよ!オッサン!!」

「……バーカ、そのために追いついて来たんだよ、オレは!お前こそ足緩めんなよ!!」

「誰に言うとるんすか!!緩めるワケあらへんでしょ!!」










先に、



ワイらを待っとる人がおるんやから。










→12.吹っ飛んどって


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