Gerade-D-

□諦めへん
1ページ/1ページ




インターハイの1日目が終わって、
旅館戻って風呂入って くつろいどったら

なんでか、小野田くんのオカンが嵐みたいに来て





『強くなれ』





そう言うて帰っていった。
まぁ、ワイに言うたんやないけど…


今日のインハイ1日目、チームとしては同着やったけど1位獲った。
せやけどワイは、





ワイ自身は、負けた。





せやからワイも気合い入れ直さんとアカンな



「章ちゃん、」



て思っとったら とん、と。
後ろからくる いつもより弱い衝撃に違和感を感じて、首だけで後ろ見る。

まー、誰かは分かっとるんやけど



「…心さん?」



いつもやったら どーん!て首のとこ飛びついてくんのに、今日は横腹んとこらへんに手回してワイの服握っとる。
うおおお、なんこれよう考えたらめっちゃハズいやんけ…!しかもこしょばい!!



「…ど、どしたんスか?腹でも減ったんすか?」

「、」

「それとも眠いとか?……おーい、心さーん?」


背中に、頭押し付けられとるせいで後ろが全然見えへん。
…なんやろ…。前髪センパイが言うには今日 緊張?しとったらしいし、やっぱ疲れとんのやろか



「…あっ!心さん、風呂!風呂入りました?めっっちゃ気持ちええすよ!」



ワイの提案を聞いてんのか聞いてへんのか分からんけど、
手離してくれたから振り返れば、ワイを見ていつもみたいに笑う。
普通に元気っぽい、か?



「?」

「髪、へちょってしててかわいい」

「はぁ!?ちょ、それ誉めてへんですよ!」

「そっかな?」

「男が可愛い言われて喜ぶわけあらへんでしょ!」

「あはは」



心さんが笑ってるん見て、今日はなんでか『笑うとこちゃいますけど!』とはツッコまれへんくて
…多分、ホンマなんとなくやけど、やっぱいつもより元気ない気する。



「…やっぱ、心さんも疲れてんちゃいますか?今日はなんか、朝からいつもとちゃうかったし…はよ風呂入って、はよ寝た方がええすよ!心さんには明日も元気に応援してもらわなアカンし!」

「…うん!ありがと章ちゃん!」



オッサンにするみたいに、笑うとこ以外も見せて欲しいとは思うけど、
でもやっぱ、心さんは笑ってんのが一番ええわ。

って、んな呑気なこと言うとる場合ちゃうか。明日はインハイ2日目…



「章ちゃん、明日ね、」

「!なんすか?」

「明日も、みんなで、ゴール獲ってね?」

「?そんなん、トーゼンでしょ!!」

「…うん、約束ね!」



2日目も、勿論1位獲りに行くつもりや。
けど、何でそんな当たり前のことをわざわざ言うんやろ て


思ったその約束には



2日目スタートして、すぐ





「田所っちはもう来ねェ…。チームが生き残るために…捨てなきゃいけねぇ駒もあんだヨ」







ちゃう意味があったんやて、思い知らされた。







「“駒”て…来ない…て捨てる!?何言っとるんすか巻島さん!!」



いくら今スプリンターが苦手な登りやいうても、スタート走っとるやろうから下りまで…せいぜい3キロ!そんなんオッサンやったら絶対すぐ追いついてくるハズなんや!!

巻島さんかてそれくらい、分かっとるハズやのに、


なんで…!



「田所が、 捨ててけっつったんだよ」

「オッサンがんなこと言うわけないでしょ!あの人元気のカタマリすよ!」

「あーーっくそっ!言うなって言われてんショ…!田所は…田所っちはな!昨日の表彰式の後ぶっ倒れて、救護テントで点滴打って2時間寝てたんショ!それでもまだ調子治ってねェ!あいつの調子は最低最悪なんだヨ!!」

「!!」



それ聞いて、なんも言葉が見つからん。
真っ白になりかけた頭に浮かんでくるんは

『みんなで』って言うた心さんで、


…ちょお、待てや…それ、



「巻島さん、もしかしてそのこと…心さん、」

「……」










『…裕くん、迅は?』

『トイレだ。さっき説明したっショ』

『だってさっきの、嘘だもん。…迅は?』

『…………お前にゃホント、嘘つけねぇな…』





『オイ、巻島…』

『んな睨むなって…田所っちだって分かってたっショ。三笠に誤魔化しきかねぇことくらい』

『…だな。仕方ねぇ…誰にも言うなよ』

『……』

『あと、巻島。先言っとく…』

『?』

『もしオレが明日走れなくなったら…かまうこたァねェ…置いていけ』

『やだ!』
『、』

『何でお前が答えてんだ。オレは巻島に言ってんだよ』

『…絶対大丈夫だよ、絶対…!だから迅、そんなこと言わないで!』

『たりめーだ、もしっつっただろうが』

『それでも、信じてるから…大丈夫だから、絶対、大丈夫だから、だから、』










「巻島さん!!」

「、あぁ、…全部知ってるっショ」

「っ…!」


当たってほしなかった予感が、当たる。

くそ…!せやから昨日、あんなこと言うたんか…!
何かあっても、オッサンを置いていかんといて欲しいて、そういう意味で…!


…なんか変やとは思たのに…なんで、気付かへんかったんやワイのアホ…!
心さんも心さんや!なんで、



何も言うてくれへんねん…!!



オッサンが言うな言うたのは分かっとる、

それでも、



それでも







…そんなにワイ、頼りないすか、










「だったら助けに行かないといけないですね!!すぐに!!」





勝手に伏せそうなる頭が、小野田くんのその言葉で留まる。


…せや、まだスタートしたばっかりやんけ。


2日目はロングステージや。
100キロ以上ある!長い直線道かてある!
おっさんが追いつけるタイミングなんかいくらでもある!!

…何、やっとんねん。クサっとる場合か。
心さんは約束や言うたやないかい。



約束したからには、それは守らな男やないやろ!





『6人でゴール獲る』





絶対や。今日勝って、明日繋げて、

3日目…チーム全員で表彰台上がるんや!!



絶対に、










へん



今ワイにできるんは、ちょっとでも早よう先頭に追いつくこと。…オッサンは任せたで、小野田くん!










→番外編3.お前も


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ