Gerade-D-
□全然分からん
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夏休みももう目の前。
さっさと休み入らへんかな〜。授業なかったら1日中走れんのにな〜!なんて考えながら外で作業しとる主将さんに挨拶して、部室のドアを開ける。
「ちーす。…あれ、前髪センパイだけすか?」
「なんだ、私だけでは不満か?」
「誰もそこまで言うてへんでしょ」
「言っていたな!!顔が!!」
「さーて、始まるまでにメンテ済ましとこー」
「おい!!」
一人うっさい前髪センパイはスルーして、準備にとりかかる。
3年は進路のこととか色々あるんやろな、放課後はたまに遅れて来よる。
今日は心さんもおらんくて、そういえば あの人も3年やったんやなーて…普段が全然そんな感じせぇへんから忘れとった。
そんな風に思っとるのもつかの間、ドアが開いて心さんが顔を出す。
「間に合った!」
「おー、ここちゃん」
「おつかれっすー!3年は大変すねー。また面談とかすか?」
「ううん、告白だった」
「…はああ!?えっ!?」
「驚きすぎだぞ鳴子」
てっきり面談とかそういう感じやと思ってたワイには予想外すぎた。
今、え、何て言うた!?告白!?
「まぁ3年だしー、皆高校最後の夏休みにカワイイ彼女作りたくて必死なんだよねぇー」
とかなんとかいいながら前髪先輩がニヤニヤとワイの方見てくる。めちゃくちゃウザい。
って、そんなことより心さんてモテんのか!
本人が恋愛より食いもん!!ってイメージしかなさすぎて油断しとった…!
「そういえば相手誰だったの?」
「たまに挨拶してくれる…髪茶色の…」
「あーアイツか。やはりここちゃん狙いだったか」
「アイツって誰スか!!」
「全っ然私の好みじゃないんだけどー」
「そんなん聞いてへんですよ」
「私はまきちゃんしか見てないけどー、あーあ。まきちゃん早く来ないかなぁー」
「せやからそんなん聞いてへんすから!」
「チッ!高身長で顔もまあまあのバスケットボーイだよ!鳴子ざまぁ!!」
「うざっ!!」
「うざくはないな!」
なんやねんそのスカシみたいな奴!いや、見たことあらへんけど!
そんなことより、返事なんて言うたんやろ…まさか心さんそいつと付き合うんやろか…!?うわ、そんなん聞きたない…!
いやめっちゃ気になるけど!いや、やっぱ聞きたない…!
「で、ここちゃんアイツと付き合うの?」
「ちょ…!!」
「んーん」
「もったいなーい、わりと優良物件ではあると思うぞ?まぁ、まきちゃんの方が断然かっこいいがな!!」
「前髪センパイ何言うてんスか!?…あー、いや、でもなんで断ったんスか…?」
「ピンとこなかった!」
「……はぁ、」
アカン。意味が分からへん…
断った理由聞いたら、好きなタイプとかそんなん分かるかと思たのに…感覚的すぎて全く参考ならへん…!
まぁ…とりあえず、付き合う気全くなさそうやからええか…
「それに、あの人よりあいこちゃんや章ちゃんの方がすきだもん!」
「…は、」
「そいえば真くん外で何してるんだろ?手伝えることあるか聞いてくる!」
「私はまきちゃんにメールしよー!」
心さんの爆弾発言に固まるワイを残して、部室のドアが静かに閉まる。
い、今なんて言うた…?
「…え、いやいやいや…ちょ、何なん今の!?どういう意味!?」
前髪センパイは分かるで?女子やもんな!一番仲ええ友達やもんな!!
でもワイは!?何に含まれてんねんソレ!!
後輩か?後輩としてか!?そのスキは一体何基準やねん…!!全く分からん!!
その告白してきた奴よりはワイの方がってことなんやろうけど!それは嬉しいねんけど!
でもそんなん、そいつの基準によって色々変わってくるやん!?
だいたい、あの人のいう好きて、なんか、…もう、アカン…
「…全然分からへん!!!」
「さっさと告ればぁー」
「メール打ちながら適当に返事するんやめてくれます!?」
「む。返事がないな、電話にするか」
「ホンっっマ人の話聞く気ないっスね!!」
そんな叫びに返ってくるように響いたんは
外から聞こえる、嬉しそうにオッサンを呼ぶ心さんの声だけやった。
あー!もー!
全然分からん
分からんけど、とりあえず素直に喜ばれへんの絶対オッサンのせいや!!
→06.なんかちょっと