Gerade-D-

□覚悟
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巻島さんのことなると見境ない前髪センパイと、
食べ物のことなると見境ない心さん。

うちの3年マネージャーふたりはめっちゃ仲良ええ。



「あいこちゃーん!」

「ここちゃん!」

「「おはよっ」」



お互い名前を呼び合って抱きしめ合う。
いや、心さんが飛びかかったのを前髪センパイが受け止める感じか。

よう分からんけど毎日やっとるその行動を、ワイはとりあえず黙って見守った。



「…今更聞くんもあれやけど、何してんスかおふたりさん。ここ外国ちゃいますよ」

「章ちゃん!」

「なにー鳴子ぉーうらやましいかぁー?」

「だ、誰もそんなん言うてへんでしょ!!」



心さんを抱きしめたまま、ニヤニヤした顔で聞いてくる前髪先輩の言葉をとりあえず否定しとく。
…そりゃ羨ましない言うたら嘘になるけど、こんな部室のど真ん前でんな



「ここちゃん、鳴子もやってほしいって」

「て!ちょ、前髪センパイ!話聞く気なさすぎやろ!!」

「章ちゃんおはよー!!」

「おわっ!ちょ、マジで何してんすか!」



前髪先輩の言葉を真に受けて、飛びついてくる心さんを受け止める。
いうても足で踏ん張るだけやけど!手どうしたらええか分からん!!近いし!!!



「え、おはようのぎゅー?」

「いや、ワイに聞かれても…って!前髪センパイ!ニヤニヤすんのやめてもらえます?!キモいすよ!?」



なんのイジメやねん!ワイ完っっ全に弄ばれとるやん!
じゃれつかれんのは弟らで慣れとるけど、
相手が心さんで、からかってくるセンパイがおるとなると話は全然ちゃうで!めっちゃハズイ!!



「いやいやいや、お似合いだよ鳴子くん?あと顔が赤いな?」

「アカン!前髪センパイめっちゃウザい!!」

「ウザくはないな!!」

「今日も楽しいね〜!」

「……」



アカン、この人のんきすぎる。心臓に悪い…と思てたら部室のドアが空いてオッサンが出てきてメッチャ焦る。
ちょ、ちょお待って今ワイめっちゃ抱きつかれとるんですけど!



「オ、オッサン…!」
「お、田所っちー!」

「お前らその呼び方ヤメロ。おめェも犬みたいに遊んでねーでさっさと中入って準備しろ!」

「はーい!」



元気よく返事した思たら、何事もなかったみたいにフツーにオッサンと部室入っていく心さん。
オッサンもオッサンでいつものことみたいな反応しかせぇへんし
なんなん今の!!フツー?フツーのことなんか!?



「鳴子さぁー」



つか今のは全部この人のせいやろ…!
何かましてくれてんねん!!



「ここちゃんのこと好きだろ」

「…は、ハァ!?ちょ、いきなり何言い出すんスか!」

「かめへん!かめへん!」

「変な関西弁使わんとってくれます?!めっちゃキモいんで!」

「そんなこと言ったら協力してやらんぞ!」

「そんなこと言うて面白がっとるだけでしょ!?」

「いやいやー、…良かったろ?」



…そりゃええ匂いしたとか、ふわふわしとったとか、
あ゛ーやめい!ワイのアホ!!前髪センパイにのせられんなや!!



「何がスか!センパイちょっと黙りましょ!!」

「何を照れている!鳴子が照れても可愛くないぞ!?照れて可愛いのはまきちゃんだけなんだからな!!」

「巻島さん照れても可愛ないでしょ!」

「可愛いよバカヤロー!!まきちゃんはなぁ!!世界一可愛いんだぞー!!」

「前髪センパイ、視力ヤバイんちゃいます?世界一て!だいたいワイ、可愛いとか目指してへんので!男はいつでもかっこよくてナンボですー!」

「何をー!?まきちゃんはかっこよさだって兼ね備えてますー!!鳴子のかっこよさなんか、まきちゃんの足元にも及ばんぞ!月とスッポンだ!」


「ふたりとも中入らないの?なんか、盛り上がってるね!」


「ここちゃん!鳴子がまきちゃんを可愛くないとか言う!!ありえんよ!!」
「心さん!前髪センパイどうにかしてください!めっちゃくちゃうざい!!」

「うざくはないな!!」
「可愛ないでしょ!!」



わけ分からん言い合いになったところに心さんがまた外まで出てきたから助けてもらお思たけど、
前髪センパイも同時に喋っとるから聞きとられへんかったんか、心さんは首をかしげる。



「…?仲良しだね?」

「 ち が う な !」
「ちゃ い ま す !」

「あはは」

「笑うとこちゃいますけど!?」



ホンマに、笑いごとやないでコレ。
前髪センパイにバレとるってことは絶対遊ばれるやつやん!!

あーもう何も考えたないわ…。



そー思っとっても、心さんがのんきに笑っとるの見とったら
ソレからは逃れられへんねやろなーって












決めるしかあらへんかった。










→番外編2.そう言うなら


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