Gerade-D-

□そう言うなら
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青八木とふたりでメンテをしていれば、いつもの声が聞こえてくる。



「迅、お腹すいた!」

「心さん。ガムでよかったらオレ持ってますよ」

「純ちゃん!」

「バカお前止めとけ。手嶋、やんなくていいぞ、コイツ飲み込むから」

「…そっスか?」

「……」

「お前が何回言っても聞かねぇのが悪いんだろーが」



田所さんをじとっと恨めしそうに見る心さんに、田所さんはメンテをしながら答える。
この二人は、同級生というより、本当に家族や兄妹のそれに近いと思う。

でもそれも、3年になって少し、変わり始めてる。



「ちょいーっス!」

「オイ、赤頭。飴だ飴」

「は?なんスかいきなり!」



それは多分、鳴子が入ってきたせいなんだろうな。



「章ちゃんおはよ!」

「おわっ!心さん…後ろから飛び付かんとって下さいよ!」

「お腹すいたー!」

「あー、もはやそれ挨拶みたいなってきてないスか…」

「わーい!飴ちゃん!ありがと章ちゃん!」

「飴ちゃんて…ワイが言うの移っとりますよ」

「飴ちゃん……めっちゃ、おいしい!」

「発音変な外人みたいになってんでー心さん」



心さんは、ベンチに腰かけた鳴子に寄っていって後ろから飛びついて
鳴子もなんだかんだ、心さんが可愛くてしかたないって感じに見える。



「…心さん、最近すっかり鳴子がお気に入りっスね」

「パーマ先輩!」

「純ちゃんもぎゅーってする?」

「はぁ?!何言うてんスか!?アカンですよ誰にでもそんなんかましたら!」

「章ちゃんあったかいよ!」

「ってそっちかい!ワイとパーマ先輩が…ないでしょ!ありえへんでしょ!!」



本人そんな気ねぇんだろうけど、心さん鳴子を振り回すの上手いよなー。
東堂さんが面白いぞーって言ってた意味がよく分かる。



「羨ましいって意味じゃないっスよ?」

「そっか」

「それに、男が男に抱きついてもなぁ…な?鳴子」

「何ニヤニヤしてんスかパーマ先輩!そんなん気色悪いんでお断りに決まっとるでしょ!!」

「だよなぁ〜。心さんだから良いんだもんな?」

「べべべ、別にそうは言うてへんでしょ!」

「ま、そういうことにしておいてやるよ」



東堂さんが鳴子をいじりたくなるのも仕方ねーなぁ、この反応じゃ。
なんて思ってれば、その東堂さんが部室にやってきて 面白いもの見つけたーって顔して寄ってくる。



「手嶋ぁ〜、楽しそうなことしてんねー!」

「楽しいっスよ」

「あいこちゃん!」

「うわ!一番アカン人きおった!!」

「それ私のことか鳴子ぉーいい度胸だな?」

「何なんこの最悪のコンビ!!鬼か!!」



頭を抱えて叫ぶ鳴子に、だんだん笑いが込み上げてくる。
つか、最悪コンビってもしかしてオレと東堂さんのことか?



「そんなこと言ってたらなぁー」
「あー!ワイもうアップするんで先行きますわー!ほな失礼しますーー!」


「あ、逃げた」

「逃げましたね」



逃げたら余計に悪化するの、アイツ分かってねーんだろうな多分。
まぁ、でも最悪のコンビか…そんなつもりもなかったんだけどな…

鳴子、お前が








言うなら



オレもたまには楽しませてもらうとするかな。










→05.全然分からん


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