Gerade-D-
□この勝負
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結局マジでめっちゃくちゃ鬼かっちゅーくらいキツかった合宿から帰ってきて、地獄の補習も終わって、
インハイのレギュラーメンバーとして練習が始まっとった。
峰ヶ山登って気合い入れた後、部室まで帰ってきて片づけとれば、
「ありがと、純ちゃん!」
後ろからそんな言葉が聞こえてきて、ついそっちに目が向いてまう。
ちょっと気になり始めたらアカンねん…あっという間にその気になるっちゅーか、とにかく心さんの声やとめっちゃ気になるちゅーか、
何の話してんねやろ…
合宿で分かったけど、パーマ先輩 口上手いからなぁ…
女子慣れしとる感じやし、心さんとも1年多く付き合いあるわけやし…いやいや、この鳴子章吉!そんなつまらへんこと気にする男やないで!!
「心さん、さっきパーマ先輩と何話してたんスか?」
ってアカーン!やっぱめっちゃ気になる!!
だって名前で呼んどるっちゅーことはあの人の中で仲良ええってことやろ?!
まぁ結局、部員は全員名前で呼んどるみたいやけど…パーマ先輩とはわりと話とるとこよー見るしな!?
基本食いもんの話ばっかの心さんとどういう話すんのか参考までにちょーっと聞いとこかなーっちゅーだけのあれや!
「足大丈夫?っていうのと、あとCD貸してくれた!」
「へ、へぇ〜。そうなんスか!仲ええっスね」
「どしたの?」
「いや〜別に!?何もないっスよ!?」
「?」
「ホンマ!何も!!」
アカン、ワイ焦りすぎや…!なんか話題!
いっそオッサンのこと聞いてみるか、
オッサンだけ呼び捨てなんもめっちゃ気になってんねん…いや でもなー
とか考えとったら後ろで巻島さんと前髪先輩がいつもみたいに騒ぎ始めて
いや、ちゃうな。前髪先輩が一人で盛り上がっとる感じやな、相変わらず。
「そういえば、あの二人て…」
「裕くんとあいこちゃん?」
「前髪先輩いつもあんなんすけど、あの二人て付きおうとるんですか?」
「うん」
心さんはなんの疑いもなさそうに、首を縦に振る。
自分で聞いといてなんやけど、普段の巻島さんの態度から見て、ない。それはない。
「…ソレ嘘でしょ?めっちゃ適当にあしらわれてますやん、ホラ今も!」
「え、でもあいこちゃん付き合ってるって言ってたよ?」
「いや!ありえへんでしょ!」
「…そうかなぁ…?」
「それ多分、前髪先輩の妄想ちゃいますか!」
カッカッカー!と笑い飛ばせば、やっと自分のペースが戻ってくる。
せや、オッサンのこと聞くんやったら今、このタイミングちゃうか?!
付き合ってるとかはないやろ!多分!
「そいや心さんもオッサンと仲良ええすけど、二人は付き合ってるとかやないすよね!」
「うん、迅とは幼なじみでね、家族っぽい感じ!」
「へ、へぇー…そーなんすか」
なんか、付き合っとるよりハードル高い気がすんのワイだけ…?
家族てアレか?兄貴っぽいとかそういう感じか…?オッサンが心さんの面倒みとる感じやし…
迅のおばさんが作ってくれるパンも料理も美味しいんだよーってのんきに言うとる心さんをじっと見とれば、不思議な顔して首を傾ける。
「どしたの?」
「や、何もないっス!せや!飴ちゃんいります?」
「いる!」
「ほい、どうぞ」
「ありがと、章ちゃん!」
オッサンやパーマ先輩にその気があるんかどうかは分からへん。
けどそんなもんは関係ないな。
嬉しそうに笑う心さんを見て
すっかりその気になっとるワイは
この勝負
絶対負けへん、そう思ったんやから 突き進む以外の道ないやろ!
→04.覚悟