Gerade-D-
□分かっとんのに
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「迅、お腹すいたー!」
「ガキかお前は」
個人練習でオッサンと走った時気ぃついたけど、心さんとオッサン…なんかめっちゃ仲ええねんな…。
オッサンだけ名前呼び捨てやし。
…まさか…付きおうとるとか…!?
「いやいやいや…ないな。ないわ」
オッサンなんか熊やで、熊!
いや、ちゅーかなんでワイそんなん気にしとんのやろ!
そんなことより、インハイまでにまた個人練みたいなんないんかなー。
主将さんが合宿ある言うてたけど、内容は『ハード』やーいうこと以外教えてくれへんし…
次勝負したら絶対ワイが勝ったんのに…と思いながらじーっと先輩ら見とったらオモロイ話なっとって、食いつかずにはおれんかった。
「分かってるだろうが補給食は食うんじゃねーぞ」
「たべないよ!」
「つーかお前、昼にフランスパン丸々1本食ってただろうが」
「フランスパン1本?!それマジすか?!」
こんなんすか?て手で大きさを作って聞いてみれば、うん!こんなのー!と同じように手動かして返してくれる心さん。
…なんやろ、この感じ。
ちゅーか、昼飯がフランスパン丸々1本て…その光景ちょっと見てみたいわ。
「コイツは馬鹿みたいに食うからな」
「それオッサンが言うんすか」
「オッサン言うな」
「褒めるより食べもの…」
「全然褒められてねーっショ」
「裕くんからは貰えない…あいこちゃんが居るから…」
「…どっちにしろ何も持ってねェよ」
うんざりした感じの巻島さんを見て、いつもの光景が頭に浮かぶ。…確かに巻島さんの事なると、なんかめっちゃ凄いもんな、あの人。
なんて思っとるワイの横でオッサンがテンション落ちとる2人を見て、溜め息をついた。
「もうすぐ終わんだから夕飯まで我慢しろ」
「え、むりだよ」
「…」
「むりです!」
「…」
「むりだってばー…」
ムリムリ連呼する心さんをめっちゃスルーして片付け始めるオッサン達。
普段は前髪先輩がうるさいイメージ強すぎて、大人しい人なんかなー思てたけど
なんや意外と子供っぽいとこもあるんやな…なんか弟ら見とるみたいや。
とそこまで思って、アイツらにやるために持ち歩いとる飴の存在を思い出した。
「せや、ワイ 飴ちゃんやったら持ってますよ」
「食べたい!」
「……どないしよかな〜」
「えっ…」
「嘘ですやん!飴ちゃんくらいいつでもやるんで そんな顔せんとって下さい!」
つい意地の悪い反応を返せば、めっちゃショックそうな顔されたから慌てて心さんの手に飴ちゃん乗せたら、目輝かせて「章ちゃん…カミサマだ…」とか意味の分からんこと言うてるけど…
めっちゃ嬉しそうやからまぁ、なんでもええか。
「迅!章ちゃんが飴くれた!」
「何赤頭に餌付けされてんだお前は。さっさと片付けろ、飯食えねェぞ」
って、ええことないわ!
何ですぐにオッサンとこ行くんやあの人は…とか思てたら心さんがワイの方に戻ってきて、思いきり笑うから。
「ありがと、章ちゃん!」
「、」
あー、これ、
これは、アカンやつやろ。
「別にこん」
「まきちゃーーーん!!一緒に帰ろぉーーー!」
「…嵐が来たっショ…」
「……」
気付いたら、負けのやつやろ。
頭では分かっとる!
分かっとんのに
気づかんフリは、できそうにあらへん。
→03.この勝負