短い夢
□浮気者のあなたと策士な彼
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「シリウスってばぁ」
目の前には香水の匂いをプンプンさせた女と、そいつの為すがままになっている私の彼氏。
「ねぇ、聞いてるぅ?」
お前から告白してきたくせに1ヶ月で浮気か。
はぁ。
嫌んなる。
次の日。
「やぁだぁ。みんなに言ってるんでしょぉ」
おい。
昨日の香水女はどうした。
さらに次の日。
「シリウスから誘ってくれるなんて。その気になってもいいのかしら?」
おいおい。
昨日の金髪美女はどうしたんだよ。
「ていうわけなんだよ。どう思う?」
カップに次々と砂糖を落とすリーマスの手元を見ないようにして、私はため息をつきながら問いかける。
リーマスはジャリジャリと音をたててカップをかきまぜながら(想像しただけで吐きそう!)、クスクスと笑っている。
「シリウスも可哀相にね」
「…ねぇ、私の話聞いてた?」
可哀相なのは私!と主張すると、リーマスのクスクス笑いはますます酷くなった。
「シリウスに仕返ししてみる?」
きっとリーマスはあえて私の話を聞かないんだ。そうに違いない。
私の抗議をあっさり流しておかしなことを言うリーマスに首を傾げてみせると、なんだか迫力のある笑顔を見せられた。
「協力してあげるって言ってるんだよ。やるの?やらないの?」
怖い。
笑顔がめちゃめちゃ怖い。
私は思わず頷いてしまった。
「や、やる…」
途端にいつもの優しい笑顔に戻ったリーマスにほっとする。
小さく息をついた瞬間、私の座るソファが沈み込むのを感じた。
「え、え、リーマス?」
至近距離で、シーッと唇に指をあてられて私は何も言えなくなる。
そのままリーマスの腕が背中に回されて、顔が近付いてくる。
「何やってんだよ!」
突然割り込んできたのは、今となってはもはや付き合っているかもあやしい彼氏の声。
「来るのが遅いよ」
大きくため息をついてリーマスはあっさり私から離れる。
ほんとにキスしちゃうとこだったでしょ、と嫌そうに呟かれたセリフは聞かなかったことにしよう。ちくしょう。
「あとはお二人でごゆっくり」
そう言ってリーマスは呆然と固まる私の横を通り過ぎ、怒りも露なシリウスの肩を軽く叩いて、優雅に談話室を後にした。
「リーマスと何してたんだよ」
呆気にとられてリーマスを見送った私たちだが、先に正気を取り戻したのはシリウスの方だった。
「シリウスに関係ないでしょ。毎日浮気してるあんたに言われたくない」
とかっこよく言ってみたものの、私もよくわからない。
「それはっ…お前が何も言ってこないから!」
「…はぁ?」
わけわかんない。
シリウスの顔を見ると、なぜか奴の顔は真っ赤に染まっていた。
「…へぇ、私に嫉妬してほしかったんだ?」
私の言葉にさらに顔を赤くするシリウス。
「でもさ、それで私がシリウスのこと嫌いになるとは思わなかったの?」
私の言葉にシリウスの顔がさっと青ざめる。
いい気味。
ほんとはシリウスの気持ちを聞けただけでもう許しちゃってたんだけど、もう少しだけ滅多に見れない彼の必死な顔を見ていたってばちは当たらないよね。
「しーらない」
浮気者のあなたと策士な彼
大好きよ、シリウス。