ortensia
□狂い染めにて華を囲う
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好きなんだとか。愛してるだとか、そんな言葉には当てはまらないんだって、ねぇ?
「ユニ」
今日も何も言葉は返ってこない。まぁいつもの事だから俺は特に気にしてないよ
白い服を脱いでいるとユニが視線をこっちに向けて来た、ああコレ?
「ちょっと手こずっちゃってね、汚れちゃった」
「……珍しい、ですね」
「んーまぁね、なかなか良いよねあの二匹の黒い狐」
あれ、珍しい。ユニが目見開いてる
「………っ!」
「おっと」
座っていた椅子から立ち上がり扉に駆け寄ろうとするユニの細い腕を掴む
無駄だって言った筈なんだけど
「逃がさないよ」
「あ、なた!γに何を…」
「何を…って大したことしてないよ。死んじゃっただけ」
そう耳元で囁けばユニはカクン、と視線を床に落とし、白い帽子が落ちて黒い綺麗な髪が露になる
「だって“姫を返せ”って言うからさ。返すなんて冗談じゃないし…」
すっかり力の抜けたユニを後ろからぎゅっと抱き締めて囁く
「もう邪魔者はいないから」
床に零れたユニの涙が凄く綺麗で、もっと見ていたかったけど…あんな男の為に泣いてるユニを見るのが嫌で今度は正面から抱きしめる
ユニは俺が死んだら泣いてくれるのかな。
言葉には当てはまらないけど、本当に大好きで大切で独り占めしたいって思うのは罪なのか
「大好きだよ、ユニ」