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□My princess Cinderella
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バシャンと音を立てバケツがひっくり返る。
名前は慌てて床に零れた汚水を雑巾で拭き取った。

「何やってるんだよ!邪魔くせえな」

バケツを引っ掛けた当人、義姉のミルキは怒鳴りドレスの裾を摘んで気にする。

「すみません…汚れませんでしたか?」

名前が近付くと義姉ミルキは巨体を揺らして凄んだ。

「汚い手で特注のドレスに触るな!今日はお城の舞踏会に呼ばれているんだからな。お前には関係ない話だけど。」

そう、今日はお城で舞踏会が開かれる日だ。きっと見たこともない煌びやかな世界がそこにはあるのだろう。
灰被り(シンデレラ)と呼ばれるわたしには一生見ることのない夢の世界。

「シンデレラ!何をぼけっとしているんです!掃除は終わったのですか?!」

「は、はい奥様。ただ今!」

二階から継母のキキョウが降りて来る。階段を一歩降りる度に紫色のロングドレスのラメがキラキラと光った。

「全く隙あらばサボろうとして。いいわね、わたくし達が出掛けている間に台所も階段も完璧にしておくのよ!」

「はい、分かりました。」

キキョウとミルキは連れ立って玄関から出て行った。
馬車の音が遠ざかり屋敷は静寂に包まれる。

(ふう…)

通り掛かりに一度だけお城を見たことがある。
勿論遠目にだが、空に向かって延びる青い屋根と白壁に美しく装飾された出窓。バルコニーには色とりどりの花が咲き誇り溜め息が出るくらいに綺麗だった。

けれどもわたしは灰被り。ぼろきれのスカートと汚れたエプロンで床掃除がお似合いの。

日が暮れ始めランプに火を灯した。薄明かりの中で階段の手すりを磨く。

(全然きれいにならないよ…)

メッキや塗装のひび割れや剥がれは磨いたくらいでは綺麗にならない。
いつも念入りに掃除しているので汚れは殆どないのだが、注意深く見ようとしない継母は名前のせいにした。

(これじゃまた怒られるかな…)



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