小話

□私だけのキング
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肩にかかる赤い髪。
後ろ姿が遠ざかってしまう…。
『待って、行かないで!!』


「どうした、大丈夫か?」…気付くと、目の前に愛しい人。
『アルバっ』確認できた優しい温もりにホッとする。
「…うなされていたが…夢を見ていたのか?」『うん…アルバが…』
「私が?どうかしたか?」『アルバが…私を置いて…』言いかけたとたん、まだ乾かない頬に涙が伝う。
愛しく優しい人が、より一層力を込めて抱いてくれる。


「私の立場上、お前を置いて行く事はあるだろう。だが、必ず戻って来る。私の還れる場所は…お前なのだから。」『…っアルバ…』


肩に、髪に、目尻に、そして…唇に…優しく甘い口付けを落とされる。
あぁ、このまま…一生貴方を感じていたい…。


『アルバ?』
「なんでしょう?お姫様?」
切長の綺麗な碧目が私だけを映す。
『暫く…こうしていて…お願い…』
「…仰せのままに…」
優しく、そして力強く抱き締められる。


… … … … …


「…すまない」『え!?』
「もう、このままではいられない…」
『っ!…何処か、行っちゃうの?』「そうではない」
「…どうやら私は、まだまだ未熟らしい…」『え?あ…』
彼の唇が…首筋から…胸元へと…そして、二人分の体重が…ベッドへ沈んでゆく…。


貴方はこの街のキング…。でも…今は…私だけの…
ただ一人の男……。


fin


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