小話

□甘い誤算
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「ロックなら、もうすぐ帰って来るゼ」
ニカッと笑うテリーさん。
私がこのアパートへお邪魔するようになって二週間…未だに、この大きく、おおらかな男は勘違いをしている。


テーブルには二つのカフェ・オレ。
暫しの沈黙…。
『ねぇ、テリーさん』
「ん?何だ?」
『テリーさんて…女、知ってる?』その瞬間、プーッと、飲みかけていたカフェ・オレを噴き出した。
「な…何だ?いきなり!?」『べっつにー。どうなのかな?って思って』


ガシガシと頭を掻きながら、自分の噴き出したカフェ・オレを拭くテリーさん。
手伝ってなんか…そう思いながらもつい手が出てしまう。
『あーあ、こんな事で動揺するなんて。街の皆が知ったらどう思うかな?』
気付いてくれないこの男に、ついつい悪態を吐いてしまう自分が嫌になる。


「ただいまー、……」
赤い目の綺麗な青年が玄関から不思議そうにこちらを見ている。
『おかえり、お邪魔してます』「あぁ、ロック、俺ちょっと買い物に…」
「…テリー、自分の客を放っておくつもりか?買い物なら、俺が言ってくるよ。隣街のマーケットへな」
今、帰ったばかりだというのに、バイクのキーを回しながら出ていってしまった。


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