小話

□宵闇の天使
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陽が落ちて、街灯がともり始める。
公園のベンチで並んで座っている俺と俺の愛しい女性。
…もう、どの位こうしているだろう。


「なぁ」
『何?』いつもと変わらない(様に見せる)笑顔。
俺の好きな【笑顔】。
「俺はお前の事、好きだゼ」
『…あたしも「でも!!」
『……』「俺よりも…好きなヤツがいるんだろ?」
『―ソワレ?』
「解りやすすぎるんだよ、お前も…兄貴も」『…〜〜』


そうだ。
お前が家に来て、熱を出して倒れた時。
この街が平穏を取り戻して以来、あんなに真剣に心配した兄貴を俺は見た事が無い。
それに、兄貴を見るお前の表情(かお)。
お前を見つめる兄貴の瞳。二人を愛してる俺だから、嫌でも解っちまったさ。
最近家に誘っても、何だかんだと理由をつけて来たがらないのは、そのせいだろう?


『ソワレって太陽みたいだね』そう言って笑うお前に「じゃあ、お前は向日葵だな。いつも俺だけを見ている」そんな会話を思い出した。
でも違ってたんだな。
俺は元々、太陽なんてガラじゃないし、お前も儚げで向日葵ってタイプじゃない。
…俺達、お互いを知っているようで、全然解っちゃいなかったな。
お前は朝顔だよ。朝陽が無いと咲けない朝顔。


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