小話

□プロローグ
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…それから一週間。
友達に誘われて繁華街のライブハウスに来ている。
「今日は運が良かったけどね、このバンドのチケット取るのタイヘンなんだからぁ」自慢げに語る友達をよそに、私はまだ、あの夜のあの男が気になっていた。


…照明が落とされる。
「始まるよ。ベースの人がカッコいいんだぁ」
現れたメンバーの一人に釘付けになる。
…あの男だ!!


演奏が始まるが、全く耳に入らない。
心臓が高鳴る。…あの男が、そこに居る。
一時間余り…目を離せなかった。
気付くとアンコールも済んで、メンバー達が去って行く。
!(追わなくちゃ!)
友達が止めるのも聞かず走り出した。


(楽屋はどっち?)キョロキョロしていると、突然、腕を捕まれ…倉庫の様な部屋へ引っ張られた。
恐る恐る顔を上げると、そこには、あの赤い髪の男が立っていた。
『あっ!!』
男は相変わらず不機嫌そうに「貴様、この前の…」
『覚えていてくれたんですか?』心臓の音が聞こえてしまいそうな距離に、あの男が居る。
「俺に平気で話し掛けてくるヤツなど、そうは居ないからな」髪の間から覗く赤い目が少し笑って見える。
………また会えた…。
何故、この男がこんなに気になるのだろう…。


「…女っ」『な、何ですか?』
「この前の公園で待っていろ。いいな」
『な…』言いかけたとたん、その場から男は去ってしまった。
(なんて強引なんだろう…)でも、不思議と嫌な感じはしない。むしろ、また彼に会えるのが…何故か嬉しい…?


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