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□第二話
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最初に目に入ったのは、血だらけの家具たち。
次は父さんと母さんだ。
父さんと母さんは、椅子に座っていた。

……血まみれになって。

二人とも、首を切られたらしい。
頭が首からだらんと、椅子の背もたれの後ろにたれている。
切り口がまる見えで、私は気持ち悪くなった。
吐きそうだ……。

その時、キッチンの奥から不気味な声が聞こえてきた。
「ギィィィィィィィ……」
クックッという笑い声もだ。

なんだろう……?とても嫌な感じ……。
見に行かなければならない、という気がした。

怖い。手が震える。
心の中では、行くな! という声と、行かなきゃ! という声が叫びあっている。

本当ならやめて、今すぐにでも逃げ出したい。
でも足が動いてしまう。
こんなに怖いのに、キッチンの奥に行きたくないのに、体がいうことをきかず、進んでいく。

一歩、また一歩……。
途中、包丁などを入れてある引き出しがあったので、そこから一番切れ味の良さそうな、長い包丁を出した。
武器を持てば、なんとかなるかもしれない。

と思ったが――おかしい。
さっきから、あの不気味な声が聞こえない。
もしかして、いなくなったのか?
私は、食器棚のかげからバッと出た。
何もいない……。
床に、血の足跡が付いている。
裸足の人間の足らしい。

それを見た瞬間、一瞬にして恐怖感が怒りへと変わった。
一気に鼓動が高まり、腹の底から炎が燃え上がるような感じがした。
手が震え、時々ピクッと動く。
「……何処だ! 出てこい!」
思いきり声を張り上げる。
父さんと母さんを殺した奴を、私が殺してやる!
その時 、後ろから誰かに首すじをつかまれた。

「まずい!やられるぞ!」
私の中で何かが言った。
反射的に、右足で後ろを思いきり蹴る。

すると、何かが足に当たり、吹っ飛んでいった。
同時に、首をつかんだ手も放れていく。
「まだだ! 逃げられる!」
体が勝手に動くようだ。
私は後ろに振り返り、首をつかんだ奴の方へ走った。
包丁を構え、そいつを切り付ける。

――と、包丁が止まった。
壁に当たった訳ではない。
私は、そこで初めて気付いた。
こいつは……父さんと母さんを殺した奴は……。


――人間じゃない!

父さんと母さんを見る。
後ろにたれた頭。
そのうち、首の皮が頭の重さに耐え切れなくなり、ゴトン、と落ちてしまいそうだ。
そしてふと、あることに気付く。

切り口から血が出ていない。
ぎざぎざの切り口。
これは、刃物の切り口ではない!
私の目の前にいるこいつは――化け物だ!
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