Mea

□第一話
2ページ/5ページ

 目が覚めた。がばっと起き上がる。

起き上がる……?私は辺りを見回した。
朝だ。開けっ放しの窓から、朝日が差し込んでいる。
「夢……かぁ」
ホッとしたその時、ドアが勢いよく開けられた。
「いつまで寝てるつもりなのよ?」
母さんだ。よかった! 生きてる……!
私は嬉しくなって、母さんに抱き着いた。
「メアリー? どうしたのよ、急に?」

「ううん、なんでもない」
私は笑いながらそう言って母さんから離れた。
「何よ? ……まぁいいわ。ところで今、何時だと思う?」
母さんが厳しい目で言う。私は反射的に時計を見た。
時計の示す時刻だと――まずい、遅刻だ!


 学校には、なんとか間に合った。
チャイムの鳴る僅か十秒前ぐらいに、教室に滑りこんだのだ。
席に着いたら、隣の席に座っていたジムが、声をかけてきた。
「珍しいな。メアリーがこんなギリギリに学校来るなんてさ」
「まぁね。……私だって驚いてるわ」

……夢のことは、後回しにしてよさそうだ。
学校で友達と過ごしていれば、すぐに忘れるだろうし……。

そして、「今日」は何事も無く、終わっていった。


 ――今、私は父さんと母さんの居るキッチンで、テレビを見ている。
そのうち、眠くなってきたので、二人にお休みを言い、二階にある自分の部屋へ行った。
窓を開け、外を見る。
綺麗な月だ。
私は暫く、夜の闇に浮かぶ月光を眺め、ベッドに横になった。

そして……まどろみかけた私の耳に、突然不気味な音と声が聞こえてきた。

私は悲鳴を聞きながら、自分の部屋のドアを開け、廊下に出た。
するとそこには、血まみれの父さんと母さんが……!


私は悲鳴をあげ、起きた。……また、悪夢だ。
全身汗でびっしょり。心臓の鼓動がとても速い。


……これで、五日目だ。
最初に父さんと母さんが殺される夢を見てから、五日続けて悪夢を見ている。
ここまで来ると、さすがに偶然とは言えない。
これは私が違う世界に行きたいと思った罰なの……?

……とにかく、もう嫌だ。うんざりだ。
悪夢のせいでかなり早く起きたけど、もう一度眠る気にはなれなかった。

しばらくの後、のろのろと着替え、髪を結ぶために鏡の前に行く。
ひどい顔だ。悪夢を見続けたせいで、前よりやつれた気がする。
この頃、食欲も無い。


……私はどうなるのだろう。
寝ても覚めても悪夢が付き纏う。
勉強も気が進まない。
何もやる気が起きない。
頭がどうかしてしまいそうだ。

金髪を二つに結び、時計を見た。
あと、十五分くらいか。
……よかった。学校に行くまであんまり長いと、よけいに疲れる。
そして私は少し早く、悪夢の舞台となった家を出た。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ