Short stories

□赤き血に飢えろ
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 ――暗い路上に、一人の男が立つ。
男は美女を抱えており、その肢体を手でなぞると、急に飽きたように放り投げた。
路上に痛々しい音をあげ、美女の死体は無惨に落ちた。
「まだ、まだ足りぬ……」
男はうめくようにそう言うと、ずるずると足を引きずるようにして闇に紛れた。


 数日経ち、ある日男は倒れた。
さ迷った先の小さな村に、黒いマントに身を隠した塊が転がっている。
男は動かない。
たまたま少女が通りかかり、それに気付いてはっとした――誰か、死んでしまったの?

少女は恐る恐る近付き、その動かない塊を覗きこんだ。
男にはまだ、息がある。
死んでいないとわかってから、少女は急いで家へ帰った。
そして大きな布を持ってきて、それに男を乗せると引きずって歩いた。
どうやら、少女の家まで連れて行く気らしい。
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