Short stories

□獄炎-HellFire
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金髪の少女が、冷たく笑った。
「そうよ、ルイ・ダグラス。
まさか、あんたのドッペルゲンガーが、あんな脆い魔者だったなんてね。期待して損したわ」
ルイ・ダグラスと呼ばれた少年は、肩にずっしりと重いものが乗ったように感じた。
なんて酷い言い方なのだろう。

「イザベラ・ルーズ、普通の魔者には、冥界の空気は合わない。
あれでいいんだ、教本にも書いてある」
背の高い少年が、分厚い本を振りつつ言った。
この少年も、髪が白髪で、下半分はうぐいす色、というおかしな組み合わせだった。
すると、あんたはいいのよ、とイザベラと呼ばれた少女が口を尖らせた。

「大体ねー、ギギライン・ドーグ、あんたはその分厚い教本を肌身離さず持ってるのが信じられないのよね。
そんなことしても、中から小人は出て来ないわよ。『クロムウェルの聖書』じゃないんだから」

ギギラインという少年は、むっとして言い返した。
「俺は、別に小人の力を借りようとは思わない。ただ教本は、持ってしかるべきものだから、持っているんだ。イザベラこそ――」
「何よ?あたしに説教する気?」
「そうしてやろうか?」
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