学生探偵 すばる

□清明学園・学園祭《上》
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誠は原浩司がピンクのエプロンを着けてタコ焼きを焼いている所を想像し――思わずクスクスと笑ってしまった。
「一組は確か、昇降口前だったよね」
誠は自分のパンフレットを開いて確認する。
――確かに、あの原浩司がタコ焼きなんか焼くとは思えない。

誠と桃汰が歩き出し――ふと止まって、
「ほら、斎藤も行くんだってば」
と桃汰がすばるを引っ張った。
するとその時、
「やあ」
と、前方から弱々しい声が聞こえた。
「あ……沢村君!」

そこには、原浩司に殴られて病院送りになったはずの、沢村賢吾がいた。
「お前、どうして? 入院したんじゃなかったのか?」
まだガーゼや包帯を付けていて、傷が治りきっていないようだった。
「病院には行ったけど、入院なんかしてないから。昨日は家で休んでたんだ」

「なんだ……てっきり入院したものだと思ってたよ。良かったね、学園祭に出られて」
「本当だよ。……でも殴られたりしなきゃ、こんなことにもならなかったのに」
賢吾は、自分の包帯やガーゼを疎ましそうに見ながらぼそぼそとつぶやいた。

「沢村君は確か、午前の担当だったよね?」
誠が尋ねる。
「ああ、そうだった。だから頑張って来たんだ」
「じゃあ、早速だけど頼むね」
「うん、わかった」
賢吾はそう言うと、薄暗い教室の中へと入って行った。



 「それにしてもよぉ、沢村って意外と凄いよな。あの原浩司に殴られたのに、また学校に来れるなんてよ」
一年一組の屋台で買ったタコ焼きを頬張りながら、桃汰がもごもごと喋った。
一組の屋台には、勿論原浩司の姿はなかった。
退学になって当然の行為だが、もしかしたら謹慎をくらっているだけなのかも知れない。
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