学生探偵 すばる

□学園祭準備・二日目
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「お前も手伝ってくれよ、これ開けるの。何かが引っ掛かってるみたいでさ……」
桃汰はそう言いながら、コツコツとロッカーを叩いた。
ロッカーは少しだけ開いていて、扉の側面が半分ほど見えている。
これならあと少し引けば、開きそうだ。

「衣装が引っ掛かってるんじゃないかな?」
誠は試しにロッカーの扉を引っ張ってみたが、びくともしなかった。
「最初からずっとこうなんだよ」
桃汰が苦笑いする。
それと同時に、
「また今度は、一体何をしてるんだ」
という声が聞こえてきた。

誠に思い当たる人物は、一人しかいない。
「斎藤君――」
「ああ! またお前かよ!」
途端に桃汰が噛み付いた。
どうやら、桃汰はすばるが気に入らないらしい。
誠は桃汰をなだめてから、
「このロッカーを開けたいんだ」
とすばるに言った。

すばるはしばらくロッカーを見ていたかと思うと、フンと鼻で笑う。
「簡単なことじゃないか。このロッカーを後ろへ少し倒してくれ」
そしてコツコツとロッカーをノックしながら、偉そうに命令する。
誠と桃汰は少し不満に思いながらも、すばるの命令に従った。

「ゆっくり倒せよ……」
桃汰がロッカーを傾けながらつぶやいた。
するとロッカーの中で、ガン、と何かが内壁に当たる音がした。
結構重い物らしい。
「もう、戻していいぞ」
すばるの合図でロッカーを戻すと、すばるがその扉を引いた。
――それじゃあ無理だよ。

誠はそう言おうとしたが、その言葉は言う意味がなかった。
あんなに開かなかったロッカーは、すばるの細くて長めの指を掛けただけなのに、すっと開いてしまったからだ。
「ど、どうして?」
すばるが開けたロッカーの中には、緑色のモップ用バケツが入っていた。
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