学生探偵 すばる

□学園祭準備・一日目
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誠は、段ボールの山から一枚を取り出すと、そこにカッターナイフを突き刺した。
――斎藤君はどっか行っちゃうし――段ボールは固いし――。
何故か、イライラする。
でもその原因は、わからない。
どうしてだ?気持ち悪い。
内臓の奥がむず痒いようで、チクチクと痛い気もする。
ああ、もう――。

「痛てッ」
ズキンとした痛みが、誠の人差し指を刺激した。
見ると、カッターナイフの刃が誠の指を傷つけていた。
傷は浅かったが、血がにじみ、垂れてくる。
「やっちゃったよ……」
誠はハンカチを出して傷口を押さえると、カッターナイフの刃をしまってからそこに置き、保健室へと向かった。


 保健室は、長方形の校舎の一階、誠のクラスとは逆方向の東側にある。
その間も誠の指からは血がにじみ続け、ハンカチをじわじわと染めていた。
誠は自己嫌悪しながら、どんよりと暗い顔で歩く。
――馬鹿みたいだ、カッターの刃で指を切るなんて……小学生かよ。

保健室で手当てをしてもらい、再び教室へと戻ると、入口の横にはさっきと変わらず段ボールが山積みだった。
誠がいなくなってから、その数は減った気がしない。
「ああ、おい!どこ行ってたんだよ?」
後ろから声がする。
振り返ると、そこには青柳桃汰がいた。

カッターを持ったまま、その手を上下に揺らしている。
「うわっ、やめろよ!さっきも切ったばっかなんだから!」
誠は一歩後ろに下がり、桃汰のカッターが届かないようにした。
「あ、そうなん?悪いな」
桃汰は意外にもあっさりと引き、剥き出しの刃を床の段ボールに下ろした。
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