学生探偵 すばる

□プロローグ
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同じ一年四組の斎藤(さいとう)すばる という。
すばるは、鼻で笑ってからぽつりとつぶやいた。
「犯人の顔は、あっちのガラスで確かめた」
そう言いながら、割れたガラスの嵌まっていた側とは逆の壁を指差す。
ここは二つの校舎のちょうど真ん中で、今も向こうのガラスには誠たちが映っていた。

「それだけで……」
教諭が反論しようとする前に、すばるが続ける。
「まだある。今、俺たちの立っている下にガラスがあるのなら、このガラスは校舎側から外へ割られたことになる。彼は外にいるのに、一体どうやって外側にガラスを割ったんだ?」
この時誠は、無意識のうちにすばるを尊敬の眼差しで見ていた。

「ちなみにその犯人は、彼の言った通り三年六組の生徒だ。
どうしても信じられないのなら、保健室へ行くといい。彼らは素手でガラスを割っていたからな。それとも……」
ここで、ちら、と教諭とガラスを交互に見る。
「何なら、指紋でも採ってみるか?そこの血痕の鑑定でもいいぞ」

砕けたガラスの傍には、血が点々と垂れていた。
ガラスを素手で割るとは、なんて馬鹿な行為だ。
三年六組の担任だった教諭は、がくりと肩を落とすどころか、醜い顔をもっと歪めて立ち去った。
あとには、誠とすばるが残る。

「あ、ありがとう……斎藤君。斎藤君ってすごいね!何だか探偵みたいだったよ!」
誠は顔を輝かせてすばるを見た。
しかしすばるは、
「あれくらい……。それに君も君だ。何故ちゃんと反論できない?」
と言って踵を返す。
「え?……その……」

誠は急に落ち込んで、俯いてしまった。
――僕は、なんて馬鹿なんだろう。
斎藤君の言う通りじゃないか。
「冗談だ。馬鹿か、君は」
すばるは顔をしかめてそう言うと、
「もうすぐ授業が始まる。行かないのか?」

と少し微笑んだ(といっても本当は嘲笑に近かった)。
誠はまた嬉しくなって、走るようにしてすばるを追った――。
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