KILLERS《キラーズ》

□第七節
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振り返るとそこにいたのは、そう、僕がこの学校に入ってから初めて友達になった女の子――小夜だ。
「小夜。久しぶり」
少し笑って見せると、小夜もにこりとした。
「本当ぉ。しばらく見てなかったけどぉ、その口調は健在なのねぇ」
「小夜も、でしょ。まるでのんびり歩く……亀みたい――」

そう言って僕は、はっとした。
以前やった仕事の――すごく大きくて強い、赤紫色のカメを、思い出したからだ。
あのときのことは、僕には苦い思い出としか残っていない。
「どうしたのぉ?」
小夜が、僕の目を覗き込むように見る。
「あ、いや。……そういえば、夏休み、どこか行った?」

小夜は、変な子、と僕を眺めながら、何か少し考えた。
「今年はねえ、いろいろ行ったよぉ。海とかあ、山とかぁ、プール、水族館、遊園地、映画館、買い物、旅行……まだあるけどぉ、聞きたいー?」
僕は自分と比べて、あまりにも差がありすぎ、小夜が少し羨ましくなった。
「ダズはぁ?どっか行ったのぉ?」

小夜が尋ねる。
しかし僕には、「強荘」と病院しか、頭になかった。
なんせ、銃弾を受けた傷のせいで入院していたのだから。
「あんまり。山……ぐらい」
「中学最後の夏休みだしぃ、楽しまなきゃ損じゃないー可哀相ねぇ」
小夜が哀れむように、僕を見た。
しかし僕は、その中でふと疑問に思ったことがあった。
「中学最後?」

小夜が、あれ?、という顔で僕を見る。
「何ぃ?だってそうでしょぉ、来年は高校生だしぃ、あたしたちは受験生でしょぉ」
そうか。
僕は仕事との忙しさで、そんなことすっかり忘れていた。
受験生……僕は、どうなるのだろう?

「でもぉ、うちの学校は一貫制だからぁ、普通にしてれば問題ないはずだよぉ?」
小夜は余裕に満ちた声で言った。
きっと小夜は、テスト勉強した?と聞かれても、してない、と言いつつ影でしているような子だろう。
まあ、あくまでも僕の勘、だが。
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