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□第五話
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ラックの家を出てから、もう一週間になる。

ラックは、あたしを気遣ってくれているけれど、あたしはこの旅に合わないらしい。
朝早くに起きて、一日中歩く。宛もなくさまよい、ただ、勘で進むだけ。

町や村へ行くこともあるけれど、食事は野生の動物を狩る。
少し休む間に、ラックから剣や斧など、武器の使い方を教わる。
あたしは、剣が一番しっくりするので、剣を使うことになった。

寝るときは野宿……。
必ず綺麗な場所へ辿りつけるとは、限らない(実際に、この前は砂嵐の吹き付ける丘だった!)。

だが、あたしが言い出したから、弱音を吐くことは出来ない。
自分の決めたことだ。最後までやらなければ!
それに、自分が決めたことも出来ない奴には、なりたくない。

「止まれ、メア」
急にラックが言う。あたしは止まって、ラックを見た。
ラックの顔が、目つきが、厳しくなっている。
あたしは、ラックの目線の先を見た。
荒れ果てた荒野の先に、少しだけ木が生えている。
そこに……背の高い、耳の尖った、あいつの姿が見えた。

「ソウルイーターだ」
ラックが、はっきりと言った。
あたしはラックを見て、
「どう……すれば、いい?」
と、震える声で聞いた。

恐怖で全身が震え、心臓が口から出てきそうだ。
「……闘え。でなきゃ死ぬぞ」
あたしはもう一度、ラックを、そして、手に握りしめた剣を見てから、遠くのソウルイーターを見た。

「準備はいいな?」
そう言うとラックは、ヒュッと一回、口笛を吹いて、斧を構えた。
ソウルイーターが口笛に気付き、あたし達を見て、最初はゆっくり、だんだんスピードを上げて、こっちへ突進して来る!

あたしは悲鳴をあげ、突進してきたソウルイーターを、何とか避けた。
しかし、ラックは動かずに、あたしを攻撃したソウルイーターに、刃を振り下ろしていた。
ラックは、ソウルイーターの頭から足までを、真っ二つに切り裂いていた。

斧の刃がソウルイーターの体を通ると、少しの間隔も空けずに、やや灰色がかった血が噴き上がった。
ソウルイーターが地面に倒れる。
ぴくりとも動かずに、ただ血だけが、静かに流れ出した。
そしてラックは、ソウルイーターの縦二つに分かれた首を、さらに横に切断した。

あたしは、目を疑うこの光景に、恐怖を感じた。
「なんで、そこまでするの?」
あたしは、ラックを責めるように聞いた。
真っ二つに斬った上で、首を横に切るなんて……。

ラックは寂しい目で、生き返るからさ、と言い、自分が浴びたソウルイーターの血を手で拭った。
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