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□第二話
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 今日は一日中楽しかった。
誰に何を言われても、大丈夫。
楽しくて楽しくて仕方なかった!
夜もずっと起きていたいほどだったけど、さすがにそれは許して貰えなかった。

私は仕方なく、自分の部屋へ引き上げた。
久しぶりに、ベッドの上の窓を開ける。

曇った空に、綺麗な三日月が浮いていた。
やっぱり、月は好きだ。
今日はこのまま、三日月を見ながら寝よう。
ベッドに横になり、うとうとする。

そして――まどろみかけたその時、何度も聞いたことのある声と音が――!

私は、一気に目が覚めた。
母さんの悲鳴が聞こえる!
起き上がりたいのに、体が強張って動かない。
「キャァァァァァ!!」
母さん……!
ダメだ! このままじゃ……早く下に行かなきゃ……!

私は無理矢理起き上がり、部屋のドアに近付いた。
「これは夢……だといいのに」
残念ながら違いそうだ。
ちゃんと感触があるし、心臓の音が聞こえる。
ひたいに汗をかいているのだって、わかる。
苦しい……。
怖いよ……!

私は震える手でドアを開け、廊下に出た。
階段を、一段一段そっと下りて行く。
……父さん、母さん……!

次第に、声と音が大きくなっていく。
耳を塞ぎたくなるような、おぞましい音たち。
もしかしたら――二人とも、もう……。
そのうち、とうとう私はキッチンに着いてしまった。
ここから、音が聞こえていた。
しかし、今は――聞こえない……?

キッチンのドアの隙間から、光が漏れている。
いや、正確には光と……血だ。
ああ……!
心臓が、痛いくらい脈打つ。
ドクン、ドクン、ドクン……。
息が上がって目の前がぐらつく。
手が、足が、震える。

……こんな所で倒れるのは嫌。
私は壁にもたれ掛かり、頭を振って、目をちゃんと開けた。
めまいがしていた。
そして私は、しっかりとドアノブを握りしめ、キッチンのドアをゆっくりと開けた。
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