Mea

□第一話
1ページ/5ページ

 私は、この平凡で単調な世界に飽きてしまった。
もちろん、他にもたくさん世界があるって、信じてるよ?

まあ、現実逃避っていうのも、あるかもしれないけど。
とにかく私はもう、スリルのない世界は飽きたんだ!



 私は部屋のベッドに腰掛けた。
窓から月光が差し込んでいる。
夜は好きだ。空気が冷たく、透き通っている感じがする。
暫く夜の風を浴び、ベッドに横たわる。

やがてまどろみかけたその時、突然大きな物音と悲鳴が聞こえてきた。
私は急いで起き上がり、部屋から出ようとドアノブに手をかけた。

――今も一階では不気味な音がしている。
泥棒でも入ったのか……?
心臓がドクドクと脈打つ。
一階には父さんと母さんがいる。
「助けに、行かなくちゃ」
自分に言い聞かせる。
他の世界に行きたいと思っているくせに、スリルを感じたいと思っているくせに、実際に起こると怖くなるんだ。

そして私は震える足で、真夜中の一階へ、不気味な音と声のする方へと歩いていくことにした。


 部屋から出て、左側にある階段を下りる。
恐怖と緊張で、あたしの心臓は張り裂けそうだ。
階段を下りきって、キッチンを見る。
……どうやらここらしい。

少し開いたドアの隙間から一筋の光が漏れていた。
と、その光の先に何か付いているみたいだ。
何だろう……?
恐る恐る近付くと――そこには、信じたくないモノ。
それを見た瞬間、心臓が大きくドクンッと脈打った。
――痛いっ!
痛みに耐えて床の「何か」を見る。
やっぱり――血だ!!
瞬間、恐怖が体中を駆け巡っていく。
汗が頬を伝って落ちた。
心臓なんかもう、どうでもいい。
早く、早く助けなくちゃ!

私はキッチンのドアを勢いよく開けた。
電気が眩しいけど、それどころじゃない!
父さんは?母さんは?
いない……キッチンの中は真っ赤だった。
床も、壁も、天井――。
そこまで見て、あたしの目の前は真っ暗になった。

天井から落ちる赤。
それが下にある血だまりに落ちていき、ポチャン、と音をたてる。
上にあるのは……?
そこで私は悲鳴をあげた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ