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□第七話
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ジェイスやラーサがいなくなり、残ったソウルイーターたちとの乱闘が始まってから、大体三十分ぐらい経っただろうか。

今、長かった乱闘に、終止符が打たれようとしている。
最後に残ったのは、あたし、ラック、それに、二体のソウルイーター。
数が減るごとに、段々と強者の確率が高くなる。

あたしとラックは、言葉は交わさなくても、どちらが強者を倒すか、といったことはわかっている。
あたしは安心して、ラックに強いソウルイーターを預けた。


そして、今。
長かった戦いは、ラックがソウルイーターの首を落とす音で、幕を引いた。
息を切らしながら、たった今落としたばかりの首を、表情のこもらない目で見つめている。

そんなラックの後ろ姿は、いつもより小さく、少しみじめに見えた。
「……ラック……」
あたしは、ふと、つぶやいた。

――何だろう?

何か、胸が締め付けられるような、そんな感覚。

――何だろう?

泣きたくないのに、涙があふれてくるときのような、抑えきれない感情。

ここにいると、何だか、胸が苦しい。


あたしは、たまらなくなって、ラックに言った。
「ラック、ここから……出ない?」
ああ、と、ラックの重い声が返ってくる。

「そうだな。……辛いのか、メア?」
ラックが、何かに気付いたように言った。
「あ、ええと……うん」

ラックのこんな姿を、これ以上見たくないから、だなんて、言えない。
結局、あたしはごまかした。


何だろう?
何故こんなにも、苦しいのか?
ソウルイーターを斬った、という罪に溺れているわけではない。

では、何だろう?
あたしはラックの後ろ姿に、何を重ねていたのか?

ラックは――?
ラックは、その赤い眼に、何を映してきたのだろう?

ジェイスや、ラーサのことを知っているラック。
ラックのことを知っている、ジェイスや、ラーサ。
何も知らない、何もわからない、見つめることしか出来ない、あたし。

もっと、知りたい――ねえ、教えてよ、ラック――。
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