Short stories

□雨天決行。
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俺は、雨男だ。

俺の出掛ける先はいつも雨。
春でも、夏でも、秋でも、冬でも雨。

運動会はいつも延期で中止、夏休みにはどこにだって雨雲が付き纏う。
それもこれも、全ては俺の家柄なのだが。
俺の名前は、時雨。如月時雨《きさらぎ しぐれ》。
うちの家系は皆、主に雨男、雨女なのだ。

これは先祖代々、雨雲を引き付けるチカラがあるらしく、俺も、そう、その不思議なチカラをものの見事に受け継いでしまった可哀相な子孫の一人といえる。

俺は自分の部屋の窓から、今日も雨が降っているのを確認した。
「今日も雨。三日連続だな」
梅雨でもない、九月なのに。
そして軽くため息をつくと、ベッドから這い出るようにした。

いつもと同じ風景、いつもと変わらぬ日常、いつもと違わぬはずの俺。
しかしこの日は、この日だけは、俺の中の何かが何故かいつもと違っているような気がした。

高校の制服に着替えたあと、のろのろと朝飯をいただく。
雨には慣れた。
だが、こうも雨が続くと気分だって沈む。
適当に食器を片し、身仕度をしてから、俺は誰もいない家を後にした。

家に親がいないのは、遠縁の誰かが亡くなったかららしい。
俺は会ったこともないし、名前も知らなかった。
親が帰って来るのは、一週間後。
葬儀のあと、その人の家の片付けも手伝うから、だそうだ。
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