Short stories

□獄炎-HellFire
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世界が暗闇に包まれる、冥界。
そこにある白い建物の前に、一人の何かがうずくまっていた。
白いような、水色のような、人であるようなもの。
そして近くには、それに似た上半分だけ白髪で下半分は青紫の髪をもつ少年がいた。

「全く、だから言ったじゃないですか。僕が二人いるわけないって」
少年がしゃべる。
と、うずくまっていた何かが、形の崩れた顔を上げた。
「僕は……」
くぐもった声だ。
少年は手を挙げ、何かが話そうとするのを止めた。
「厄介なものを送ってくれましたね、あの人は」

うんざりしたように顔をしかめ、もう液体のようになった何かを見た。
「君は、この冥界の空気は合わないんですね。もうすぐ蒸発して消えますから、どうぞ、安らかに」
そして着ていた黒いコートから何か、ボトルを出した。
「神に伝わる聖水です」

少年は液体に、ボトルの中身をぶちまけた。
すぐに液体は、聖水ごと消えて、無くなった。
それと同時に、後ろから背の高い少年と、金髪の少女が歩いてきた。
少年は、ホッとしたようにため息をついた。
「見ていたんですか?二人とも」
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