学生探偵 すばる

□清明学園・学園祭《上》
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 清々しい朝。
空には青空が広がり、まるで今日の学園祭を喜んで迎えているようだった。
白い雲はわずかに流れ、上空の風向きを教えてくれる。
「さあっ! みんな頑張ろうね!」
誠は、開演前の教室の廊下で、張り切って声を出した。

原浩司のせいで病院送りとなってしまった沢村賢吾を除くクラスの生徒たちは、うなずいたり、うん、と言ったりしてそれに答えた。
「じゃあまずは前半の係の人たち、頑張ってね」
お化け屋敷では、前半、後半に分けて店番をすることになっている。
誠、すばる、そして桃汰は後半の係だ。

「他の学年でもいくつかお化け屋敷やるんだよな」
前半の生徒が自分の持ち場に向かうのを尻目に、桃汰が言った。
「そっちに流されなきゃいいんだけどな」
一方すばるは、今朝配られた学園祭のパンフレットをつまらなそうにめくっている。

パンフレットの表紙には、昨日紛失物騒動を引き起こした花岡明日香の描いた絵が印刷されていた。
清明学園のブレザーを着た女学生と男子学生が、楽しそうに笑い合う絵だ。
そしてその上部に「清明祭」とオレンジ色のポップ体で題が入っている。

誠はしばらくぼうっとそれを見ていたが、やがてはっと我に返った。
「えっと……どこに行こうか?」
自分たちの係は後半の為、前半は大いに楽しむことができる。
十分前に開校したので、誠たちのいる三階にもちらほらと一般客の姿があった。
「じゃあ最初に一年一組の所に行こうぜ?」

桃汰が思い出したように言い出した。
「一年一組っていえば……原浩司のいるクラスでしょ?」
誠は原浩司のことを思い出し、気分が悪くなった。
人をあんなに殴れるなんて、正気の沙汰とは思えない。
「大丈夫だって。一組がやるのはタコ焼き屋だぜ? あの原がタコ焼きなんか焼くかよ」
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