学生探偵 すばる

□学園祭準備・二日目
1ページ/8ページ




 金曜日の朝、八時ぐらいに誠が自分のクラスへ行くと、何やら騒ぎが起きていた。
――また? いい加減にしてよ、もう。
教室の中央にある空間に人が集まっている。
「今度は一体何があったのさ?」
適当に近くにいた生徒に話しかけた。

花岡明日香(はなおかあすか)という、小柄でショートヘアの女子生徒だ。
「あ、上条くん。おはよう」
「おはよ――」
明日香はのんびりと挨拶をすると、誠の返事を無視して説明し始めた。
「私が朝学校に来て衣装作ろうとしたとき、昨日まで置いてあった材料と衣装の山が無くなってたの」

「どこかに仕舞っ――」
「ちゃんと教壇の隅に置いておいたんだよ。おかしいよね?」
「そう――」
「それでみんなに言ったら、あのロッカーが怪しいんじゃないかって話になったの」
明日香はそこまで言うと、みんなが取り囲んでいるロッカーを指差した。

「あのロッ――」
「でもね、いくら開けようとしても、開いてくれないんだよ」
「ど――」
「わかんない。中から鍵でもかかってるみたいなんだよね」
明日香はマイペースを貫き通して最後まで言うと、再びロッカーを眺めた。

一方誠は、そんな明日香に振り回されながら、複雑な心境で明日香の目線を追った。
ロッカーは、何の変哲もない灰色に塗装された鉄製のものだ。
縦長で、よく更衣室なんかにある地味なタイプ。
――あれが、そうか。
その周りには生徒が何人かいて、ロッカーを開けようと躍起になっている。

あのロッカーは、本来は教室後部の右側に置いてあった。
しかし昨日、お化け屋敷のお化け役が入るため、教室の真ん中あたりに移動させたのだ。
誠はそのロッカーに近付くために、まだ骨組みだけの不完全な通路を辿った。
「あ、上条」
通路の途中で、誠はロッカーの前にいた桃汰に声をかけられた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ