学生探偵 すばる

□学園祭準備・一日目
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 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
生徒たちは自分たちのクラスへと、わくわくした足取りで入っていった。
――その中を、逆方向へ進む者がいる。
だらしなく垂れたネクタイ、はだけ気味の胸元、行き交う人々を邪魔そうに見つめるやる気のない目。

ふとその後ろに、その生徒を追う小さな人影があった。
「斎藤君!」
誠が走ってすばるを追いかける。
「……何か用か?」
すばるは立ち止まった。
が、誠のことを鬱陶しそうに見て、再び前を向くと歩き出す。
それを見た誠はまた、慌ててすばるを追いかけた。

「ちょっと、斎藤君! 次の時間から学園祭の準備だよ? どこに行くつもりなんだよ?」
今日の時間割は、午前四時間は普通授業、午後二時間は学園祭準備だ。
誠がやっと、すばるに追いついた。
「学園祭の準備なんて、別に俺がやらなくとも他の奴がやるだろ」

「そんなことないよ。斎藤君にしかできないことだってあるさ」
すばるはそれをフンと鼻で笑うと、また歩き出そうとして――ふと、足を止めた。
「いや、そうだな」
「え?」
「俺にしかできないことがある」
すばるがにやりとして、続ける。

「――屋上で昼寝、ってのは、俺にしかできない」
そして誠が何か言う前に、さっさと歩き出して消えてしまった。
「何だよ、それ!」
誠は誰もいない曲がり角に叫んだ。
しかし、反ってくる声はない。
――本当に行っちゃったじゃないか。
誠は、ちぇ、と小さく毒づくと、自分の教室へと戻っていった。


 「あ、そっちの段ボール取ってー」
「これ?」
「それ。ありがとね」
教室の中では、初めての学園祭ながらも、着々と準備が進められていた。
誠のクラス、一年四組では定番中の定番、お化け屋敷をする予定だ。
教室の端にはたくさんの段ボールが山と積まれ、その隣で解体されるのを待っていた。
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