学生探偵 すばる

□プロローグ
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 僕と君が出会ったのは、偶然だった。

――「だから、違いますって!人違いです!」
「お前しかいないだろうが!ここにいたんだから!」
上条誠(かみじょう まこと)は、もう泣きそうになっていた。
昼休みに学校の横を通っていたら、運悪く捕まってしまったのだ。
「お前がいなきゃ、誰がこのガラスを割ったんだ?誰かがお前に罪をなすりつけたとでも言うのか?」

一人の男性教諭が地面に散らばったガラスを指差し、次にガラスの嵌まっていたはずの窓を指差した。
「そうです!僕はたまたまここに通り掛かっただけで、偶然逃げていく男子生徒の後ろ姿も見えました!あれは確か、三年六組の――」
「馬鹿を言うな!うちのクラスの生徒が、こんな大事な時期にそんな馬鹿なことするはずないだろうが!」

誠が必死に弁解するも、無に終わる。
誠の精神も、そのガラスのように砕けそうだった。
「だから、してたんですってば!何回も言いますけど、僕はたまたま――」
「――五月蝿いなあ、もう。この学校は昼寝さえさせてくれないのかよ?」
突然、不機嫌そうな声が降ってきた。

「ご、ごめんなさい!」
誠は条件反射で謝罪した。
しかし、声の主は姿が見えない。
どこにいるのだろうか。
「何も、君が謝ることはない。謝るべきなのは、そっちの先生だ」
誠は上を見上げた。
教諭も吊られて上を見上げる。
頭上から声がした――しかし、今度は頭上から人が降ってきた。
え、人が――?

その人はトン、と地面に降り立つと、威嚇するような声を出した。
「彼の言うことは本当だ。男子生徒三人がガラスを割り、そこへたまたま通り掛かった彼に罪を被せようと逃げ出した。
彼は当然困惑して立ち止まるから、そこへ運悪く先生のご到着」

「な、何言ってるんだお前はぁ?」
教諭の頓狂な声が辺りに響く。
「それに、そう言うのならお前は証明できるんだろうなぁ?」
醜く笑みを浮かべた教諭は、人よりゴリラに近かった。
誠はこの突如降ってきた謎の学生を知っていた。
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