KILLERS《キラーズ》

□第十三節
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《ダズ》



 「聞いたよ、諸刃。大変だったんだって?」
綺麗な黒髪を一つ結びにした女の人が、諸刃に言って笑った。
その人は、とても華やかな服を着ている。
ドレスみたいなピンクのワンピースで、ロングスカートの衣装だ。
何だか、僕が入ってはいけない所にでもいるみたいだ。

でも、ここはそういった大人の店ではなく、ただのバーだ。
いや、正しくは、「ただの」バーではない。
《グリフ》とかいう団体の集まるバーだ。
「大変も何も……あったもんじゃないぜ」
諸刃がため息をつきながら、その女の人に返した。
「何たって、危なく木っ端みじんになるところだったんだからな」



 ――僕と満月は、プレハブ小屋の爆発のあと、後始末をする、と言い残した諸刃たちを置いて宿に戻ってきた(生き残ったあの壊兎たちは、諸刃たちのほうについていった)。
そして、宿のセキュリティにつかまらないよう、出たときよりも慎重に部屋へと入った。
僕は、もちろん人間の姿で(僕は何にも変身できないので当たり前だが)、満月は雌狼の姿のままでだ。

そのとき僕たちは、全身血まみれだった――青木という、今は爆発してなくなったプレハブの持ち主の血だ。
青木は、プレハブの爆破解除のボタンを押し、そのあと自分で首を切って自殺した。
僕たちはやっとのことで爆発から逃れ、ここまで逃げ仰せたわけだ。

 僕と満月は今、宿の部屋に座り込んでいた。
夜中だし、何もすることがない。
眠ろうにも体中血まみれだし、気持ち悪いせいもあるが、まだ逃げ出したときの興奮が収まらなくて眠れない。
すると満月がふと立ち上がり、僕の服のすそを少し噛んで引っ張った。
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