KILLERS《キラーズ》

□第十一節
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《ダズ》



 僕は、満月が全部話し終えるまで、一言も口を利かずに黙って聞いていた。
そして一つ間を空けて、やっぱり とだけつぶやいた。
「何が?」
満月が聞く。
「チップは自分を隠してた。自分の本性を……。諸刃はそれを、知ってるのかな」

知らないのだったら、教えてあげないと。
あいつが如何に卑劣な奴なのかを。
諸刃も騙されているに違いない。
しかし僕は、ぽかんと口を半開きにする満月を見て首を振り、
「いや、今は……それどころじゃ、ない」
と言ってまた満月を見た。
今はチップより、満月を気にかける時だ。

「それで満月は、狼になれるようになったんだよね……」
困った。
……何て言えばいいんだろう?
僕は満月がその実験を受け入れた理由も理解してるし(満月は諸刃が好きだから)、怒っても過ぎたことなので仕方ない。

「それで……でも、普段の生活には問題ないんでしょ?」
僕は満月に恐る恐る尋ねてみた。
もしかしたら不躾な質問だったかも知れない。
生活に問題ないからじゃあ大丈夫、なんて満月はそんな楽観的な人じゃない。
案の定、満月の顔が険しくなった。

「ダズは、だったらあたしが狼や熊や狐になったって構わないって言うの?」
満月が狼さながらに目をぎらつかせた。
怖い。もう狼が板についているじゃないか。
「そんなわけない!」
僕は両手を振って弁解した。
「ただ、その副作用で満月が悩むんなら……できる限り僕は助けてあげるって……そう思ったんだ」
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