KILLERS《キラーズ》

□第十節
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 諸刃の持ち物が新木たちに持ち去られ、部屋はさらにがらんとしてしまった。
こうしてみると、諸刃がどれだけここに長く住んでいて、どれだけ僕たちの暮らしを支えていたかがよくわかる。

テレビやテーブル、ソファは持っていかれなかったが、代わりに諸刃の部屋の中の物は僕の知る限り、何一つ残っていない。
今、僕と満月はダイニングのソファに座り向かい合っている状態だ。
満月はただ下を向いて暗い表情をするばかり。
僕はどうすればいいのかわからず途方に暮れていた。

「諸刃……」
満月がふと、つぶやく。
「帰ってくるって言ったじゃない!」
つぶやきが悲痛な叫びに変わり、がらんとした部屋に虚しく響く。
「満月、落ち着いて……」
僕は満月の向かいのソファから立ち上がり、満月の側へ歩いた。

「ダズは平気なの?仲間が……家族が、いなくなったんだよ……?」
僕は立ったままゆっくりと瞬きをしてから、満月に優しく微笑みかけた。
「諸刃は、一人でもやっていける。……確かにいなくなったのは大きいけど、まだ僕たちは……完全に一人になった、わけじゃない」

満月が伏せていた顔を上げた。
するとなんと――満月は泣いているじゃないか!
僕が泣かせたのか!?
「だって諸刃、言ってたじゃん!あたしたちに……。帰ってきてって言ったら、当たり前だろ……って!」
満月に聞こえたかどうかわからなかったが、どうやら聞こえていたらしい。

「約束……したんだよ?」
満月の目から、大粒の涙が伝って落ちた。
やっぱり僕には、満月に何もしてあげることはできない。
「なのに、もう会えないなんて……!」
諸刃の代わりにもなってあげられない。
「あたし……そんなの嫌だよぉ……ダズ……っ!」

満月は僕の服を両手で掴み、すがりつくようにして泣いた。
こんなに満月が泣くなんて――。
僕は励まし方なんてわからない。
だけど今は、そっと満月を抱きしめていた。
「いつかきっと――また、会えるよ。……僕たちは同じ空の下に、生きてるんだから」

満月が泣きながらうなずき、僕はしばらくそのまま広い部屋に立っていた。
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