KILLERS《キラーズ》

□第九節
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《諸刃》



 世の中には、女に出来て男に出来ないことが嫌と言う程ある。
今回もそう。
俺は満月みたいに優しく声をかけて慰めることは出来ない。
想像したら気持ち悪くて吐きそうになった。
とにかく、ダズを慰めるのは満月の役目だ。
こういうときには女の必要性ってのを深く感じる。

 そして今。
俺はヘッドフォンをつけながら、音楽を聴いていた。
最近現れた新人のロック歌手で、なかなか俺好みの曲調だ。
ソファにゆったりもたれながら聴くロック――。
これ以上の至福はない。
すると突然、何故か体にビリビリと振動が伝わった。

ああ、俺もしかして感動してるのかも。
そして次に、だんだん大きくなるボリューム。
こんなところ、あったっけ?
だんだん、ゆっくりと音が大きくなっていく。
あったような、気がしない。
だがまあ、そんな演出あったかも――。

――あるわけない!
耳が痛くなっても上がっていくボリュームに、俺はとうとう堪えきれなくなった。
突然こんなに上がるなんておかしい!
耳の痛みが激しくなり、ヘッドフォンを無理矢理剥ぎ取るように外した。
驚きが悲痛な叫びに変わる。
「諸刃!」
また大音量!

びくっとしたが、気付いてみると満月が横に立っていた。
「何だよ……痛て……」
俺は両耳を押さえて返事をした。
ああ、よく見たら後ろにダズもいるじゃないか。
もう慰められたのか?
「何度ドア、ノックしたと思ってんの?思いっきりやったのに……。
聞きたいことがあるの」
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