KILLERS《キラーズ》

□第七節
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《ダズ》



諸刃の書類送検騒動から数日後、僕と満月は短い夏休みを終えた。
学校が、始まったのだ。
いつものだらだらとした生活から、一気に慌ただしくなった。
満月はそれなりに早く起きて準備をしていたが、僕はそんなこと頭にもなかった。
よって僕は、満月に指示されるがままに、支度をした。

「何だよ、お前ら……何してんだ?」
あまりの騒がしさに起きたらしく、諸刃がぼうっとした目で僕を見ている。
「学校!」
僕が叫ぶように答えると、諸刃は、ああ、とうなずいた。
社会人である諸刃は、きっとこんな忙しさは、とうに忘れ去っているのだろう。

「ダズ?行くよー?」
玄関の方から、満月の余裕がある声が聞こえてきた。
「ま、待って……!」
僕は、廊下に脱ぎ捨てられた自分のTシャツを踏み、見事に顔から転んでしまった。
時間が無いというのに!

僕はそのTシャツを部屋に投げ入れると、ばたばたと満月の後を追って玄関を出た。
「行って……きます」
諸刃が、何か面白いものでも見たような顔をしていた。
むっとしたので僕はすぐに扉を閉め、それを見なかったことにした。


家を出てからは、僕と満月はいつもどおり話をしながら途中まで登校した。
僕は満月の通う一貫学校の中等部で、満月は高等部だ。
どちらの校舎も目と鼻の先にあるので、僕は途中までいつも満月と一緒に来ているのだ。
中等部の校門前で満月と別れ、そこからは記憶を手繰り寄せながら進む。

白い校舎へと続く、赤レンガの道。
道の左側は花壇で仕切られ、その向こうにはグラウンドが広がっている。
そして道の右側には、しばらく倉庫が続いたあと、体育館が堂々と建っている。
そういえば、この体育館の影で、僕は一人の女の子と知り合ったんだった。
「ダズぅ?」
すると突然、誰かが僕を呼んだ。
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