KILLERS《キラーズ》

□第五節
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《諸刃》



梅雨も明け、外では強い日差しの中、セミがけたたましく鳴いていた。
俺は、ようやく迎えた夏のある朝、安心しきって眠りこけるアイツらを、優しく起こしてやった。


まず、ドアを軽く叩く。
ダズはこれで起きたが、満月は部屋の中がざわめかないので、第二段階だ。
起きろ、と大声で呼ぶ。のと同時に、ドアを殴るように叩いた。
ダズが、自分の部屋の中から少しだけ顔を出して、俺と満月の部屋の様子を伺う。

さすがに起きるだろう、と思いきや、満月の部屋はしんと静まり返っていた。
中に……満月、いたよな?確か。

心配になったので止めると、しばらくして満月の部屋のドアが開いた。
「諸刃、ダズ……おはよう」
満月は、目をこすりながら、ピンク色の寝巻姿のままで出て来た。

まるで、清々しい朝を迎えたときのようだ。
「……おはよう」
俺とその近くにいたダズは、少しひきつった顔で返事をした。


「どうしたの?休みの日ぐらい、ゆっくり寝させてくれてもいいじゃない」
満月がトーストをかじりながら、もぐもぐと言う。
……こいつ、さては自分が何故この家に住めているか、わかってないな。

「せっかくの休日を消費しちまうようで悪いが……仕事だ」
満月が、何それ?、と言わんばかりに、首をかしげる。
ああ、やっぱりだ!

「忘れんなよ?お前らの学校のせいで先送りになっていたが、お前らはまだ仕事のノウハウの、ノの字すらわかっちゃいねえんだからな?」

満月が、ああ、と納得したような顔をした。
だが、言ったはいいが、こいつらが言葉の意味を理解してくれたとは、思えない。
そのまま、だから?と聞き返してきたからだ。

俺は、いらつきながら言った。
「だから仕事だって言ってるだろ。今日から三日間、静岡にある山へ行く。さっさと支度しろよ」
すると二人は、やっぱりな、仕事のことを一切忘れていたようで、
「え!?」
とだけ、叫んだ。
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