KILLERS《キラーズ》

□番外編
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《ダズ》



「ダズ、今日から学校でしょ?」
梅雨のある日、満月が扉越しに聞いてきた。
僕は、紺色の制服に袖を通しているところだ。

「うん。待って、今行く」
僕は、今日から学校へ行く。
満月と同じ高校ではないが、満月の通っている一貫教育学校の、中等学部だ。
そこは、学校にいる間は英語で話すので、言葉がわからない僕にはぴったりだ。

僕は、玄関から呼ぶ満月の声に半ば急かされながら、通学用のかばんをひっつかんで部屋を出た。
「制服、ぴったりだね。よかった!」
満月が僕を見て言った。
「制服か……懐かしいな」
諸刃も、壁にもたれながら僕を見ている。

日本は義務教育なので、いくら僕に学校へ行く気が無くとも、行かなくてはならない。
この間、ギルドからも入学手続きの同意書が送られてきた。

僕は、その書類の生徒の欄にサインをして、保護者の欄には、諸刃がサインした(ここで知ったが、諸刃は成人していたらしい。失礼だけど、まだ十八歳かと思っていた)。

「じゃあ……行って、きます」
僕は、もう少し後に出かける諸刃に言った。
諸刃は、一人で仕事に行く、と言っていた。
もともと一人だったけど、それはチームを組んでいなかったからだ。
この間ギルドに申請して、昨日ようやく許可が下りたらしい。

「おう。行ってこい」
諸刃が言うのを聞いて、僕と満月は玄関の扉を閉めた。
以前、一人でも仕事に行くのか、と聞いたとき、諸刃はこう言っていた。
「お前らに合わせてたら、いつこの家から追い出されるか、わからねえからな」

確かに、休みの日だけしか仕事が出来ない僕らに合わせていたら、この、ギルドから貸して貰っている家には、すぐに住めなくなるだろう。
ギルドからは、家を貸すには、周期的に仕事をすることが条件だ、と言われていたからだ。
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