KILLERS《キラーズ》

□第十八節
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《諸刃》



 満月とダズは連日公務やら雑務やらをやらされているようだ。
満月……大丈夫かな。辛くないかな。
俺はそんなことを考えながら、とある施設の前に車を止めた。
そこは、《美波野(みなみの)水族館》。

神奈川県の中でも東京寄りにある水族館だ。
ここに、今日ある“生物”が運送されてくる。
狩奴のデータベースを足跡も付けずハッキングできるやり手が《グリフ》にいて、そいつが仕入れた情報だ。
「早く来ねぇかな、な? 早く見てぇなー」

……そして俺の隣――俺は運転席にいるので助手席だ――には、もう一人。
「うるせぇよ、ララ。静かにしてろ」
何で今回は俺とララの二人なんだろうか。
とんだ災難だぜ。
ララは横で目を輝かせている。
今は人型で、ツナギのような服に、相変わらず迷彩柄の、マフラーのような長さのスカーフを巻いている。

迷彩柄が逆に目立つじゃないか。
迷彩柄の意味ねぇよ。
それも含めて今日という日が災難だ。
そういう俺は、黒の革ジャケットにジーパンで、目立つ髪は帽子を被り、寒さを防ぐ為に白黒のマフラーをしている。
ララとは大違いだろ。

「そういえば、ララは何回か“こういう”仕事したことあるのか?」
俺はララに尋ねた。
まだララは目を輝かせているが、もし犬型だったら尻尾をぶんぶんと振っていたことだろう。
「おうよ! そりゃあ俺の手にかかれば、こんな仕事の一つや二つ、朝飯前ってとこよ!」

ララが得意げに笑った。
何だ、この感じ。
言いようのない黒い感情が腹の中を渦巻いていくようだ。
「そうかよ。じゃあその自慢の腕に期待しようじゃねぇか」
俺は引き攣り笑いで、その感情をごまかした。
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