KILLERS《キラーズ》

□第十六節
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《満月》



しんと静まりかえった部屋の中、あたしと諸刃はテーブルを挟んで向かい合うように座っていた。
諸刃の家にある時計が時を刻んでいるが、時間が止まっているように、一秒一秒が長く感じる。
その沈黙を破ったのは、諸刃だった。
「……はは、まいったな」



 ――あたしはギルドでダズのことを話したあと、家に帰るとすぐに諸刃に連絡した。
チップが言っていたことを、諸刃に知らせなきゃ。
電話をかけたら諸刃はすぐに出て、大丈夫だったか、と聞いてきた。

あたしはうん、と答え、明日会って話がしたい、と切り出した。
その日中でないのは、単にあたしが疲れていたからだ。
ばたばたしててお風呂も入ってないし、服も着替えたい。

諸刃にこれを言ったら、ダズがさらわれたというのに何を呑気な、と言われるかも知れない。
でも、シャワーぐらい浴びたい。

そして、今。
あたしは約束通り日が変わってから、ギルドで聞いたことを諸刃に全て話した。
諸刃は困ったように苦笑いして、まいったな、とだけ漏らす。
「確かに、《ねずみ捕り》の中にいる研究員は狩奴の仲間だ。だがギルドの会議室に居る奴までそれを知っているとすると、厄介だな」

あたしは、うなずいた。
諸刃が続ける。
「俺が前にギルドの会議室に呼ばれたときは、環境省の大臣まで出て来てた。例え上部に報告しても、多分揉み消される」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「何か他の策を考えよう。……それより、俺からも話がある」

諸刃が無理矢理この話を終わらせて、自分の話を始めようとする。
何だか、あたしの話を流された気がする。
あたしの話、真剣に聞いてくれてたのかな?
でも狩奴の今後についてはダズとも一緒に話したいから、戻ってくるまでは話を進めずにいよう。

「話って、何?」
あたしは諸刃に尋ねた。
諸刃は緊張したような面持ちで、静かに口を開いた。
「狩奴の仕事、《雑務》についてなんだが……」
諸刃につられて、あたしまで緊張してきた。
そういえば、チップが狩奴は実験の後始末の為にある、とか言ってたっけ。
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