†Lasting Town†
□万華灯
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ここは、永続する街。
秀が来たときから数カ月、いつもと変わらぬ街は、黄昏に染まってから目覚めた。
「目覚めろ、永続する街よ。……迷える者を、救う為に」
周りに家が、丸く立ち並ぶ広い広場。
そこの中心に、誰かがいる――少女だ。
背丈の小さな少女が、その姿からは似合わない口調で言ったのだ。
少女は、大きく、黒に光ったシルクハットをすっぽりと被っている。
顔半分がハットに隠れているが、長く柔らかな金髪は、地面につきそうなくらいのびていた。
街にわずかな明かりが灯ったとき、後ろから足音が聞こえた。
「こんばんは、レディ」
ふらふらと揺れる赤紫のマント――。
「ああ、こんばんは。ミスター・スルー」
少女は、着ている黒のエプロンドレスをひるがえし、ミスター・スルーに返事をした。
「今夜は月の出ない日でしたか。貴女には少々酷ですね」
「そうだな。だが……仕方ない。これも私に課せられたものだからな」
二人の会話は、さっぱりわからない。
だが少女は、どうやらタウンらしい。