KILLERS《キラーズ》

□第十四節
2ページ/37ページ




《諸刃》



 桐生の車を走らせること四十分。
俺たちは東京の廃れた裏町の、いかにも怪しげな通りで車を降りた。
「何、ここ? ……本当にここで合ってるの?」
満月が心配そうに言う。
怯えているようだ。
「大丈夫だ」
俺は慰めになるかどうかわからないが、言っておいた。

「そうだけど……でも何でこんな怖いところにあるの?」
「あたしもこんなところ、聞いたことないわ」
最初のは満月、そのあとのは有美だ。
ここには俺と満月、その他に有美、ダズ、そして桐生がいる。
有美は研究はしたことがないが、キメラの世話ならしたことがあるからだ。

「どうしてここか、なんて、理由は一つしかないだろ? 表通りにレンタルラボだなんてもんを造っちまったら、一発でアウトだぜ。何せ『劇薬まで』扱えるんだもんな」
一般人が劇薬なんて扱っていいわけがない。
警察に見付かったら廃業、だけでなく、顧客の俺たちまで芋づる式に逮捕確定だ。

「そういえば、どうして諸刃はここを知ってるの?」
満月が思い出したように聞いてきた。
「『昔使ったことがある』って言ってたけど……」
俺は廃れた裏町の建物を見回して、その中の一つに近付いた。
何に使ったか教えてやろうか?
いや、何だかそれじゃつまらない。

そうだ。
「当ててみな。ちなみに俺は、物理学の方が得意だからな」
こっちのがいい。
少しのヒントを添えて、言ってみた。
正解は、まだ言わないつもりだ。
俺は一つの建物の前で立ち止まると、少し上を見た。

建物はボロボロの高層ビル。
窓はなく、コンクリートが剥き出しで、今にも崩れ落ちてきそうだ。
俺たちのいる一階部分の外壁は、スプレーの落書きだらけだった。
どこかの若僧が書いたのだろう、赤や黄色、緑や青など色とりどりの英単語。
これは前から、変わらない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ