Mea

□第一話
4ページ/5ページ

 さすがに父さんと母さんも、私の様子がおかしいと、気付いたみたいだ。
いろいろと聞いてくる。
――どうしちゃったの?最近変よ?どこか具合が悪いの?――。
私は自分の部屋のドアにもたれ掛かり、黙ってその声を聞いた。


今はもう、夜が嫌いになった。
好きだったはずの月だって、夜空に浮かぶ邪悪な悪魔の目。
涼しい風も死に神の吐息。……全てが怖い。助けて!

でも誰にも話す気にならない。
こんなこと話したって、心配し過ぎだとか、馬鹿らしいだとか、言われるだけだ。
私は、あきらめて一階へ下りて行く父さんと、母さんの足音を聞きながら、一人ぼっちの部屋で悪夢に怯えていた。

きっとまた悪夢を見るんだ――と思ったが、その夜は悪夢を見なかった!
おかげで久しぶりに、ぐっすりと眠れた。
今までのことが、まるで嘘の様に頭から離れていく。
学校でも元気で、授業もちゃんと受けられた。

ジムは、私の様子がいつも通りになって、なぜか嬉しそうだ。
「おい、メアリー。昨日までと全然違うな。何かあったのか?」
と、うきうきした顔で聞いてくる。私は、
「ううん、いつも通りよ」
と言ったが、自然と顔がほころんでくる。

「じゃあやっぱり昨日までのアレは……」
ジムが一旦、言葉を切る。
「何よ?」
私が聞くとジムは、私の目をじっと見て、笑いながら言った。
「拾い食いでもしたのか!」
みんなが、とたんにどっとわく。
私は、みんなにも笑われてしまったので、
「あんたと一緒にしないでよ!」
と、言い返してやった。
教室がまた、どっとわいた。




……心の中では、今日で悪夢から逃れられたと、信じたかった。

でも分かっていたのかも知れない。


  これから起こる
    悲劇を。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ