KILLERS《キラーズ》

□第六節
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部屋に移されてからしばらく経ったとき、ダズの気が付いた。
いつもの半分ぐらいしか目が開いていないが、意識はあるようだ。
「ダズ、大丈夫?まだ痛いの?」
満月が聞く。
「すこし……いたい。……あたまが……ぐらぐら、する」
「寝てた方がいい。手術したし、疲れたんだろ……寝不足だったし。
休んどけよ、抜糸するまでは入院してるらしいからな」

ダズは、そうする、と弱々しく言うと、ちらっと満月を見た。
「満月……ぼくは大丈夫だから……。しんぱい……しないで」
満月は、はっとしたあと、安心したように微笑んだ。



 その後、ダズは無事に退院した。
今は家のリビングにいる。
入院中のダズは、周りにいる自分より小さい子供に振り回されて、少し可哀相だった。
「だって……あの子たち、僕を寝不足に、させるから」
個室に移りたい、と言っていたときのことだ。
「毎日のように、就寝時間になったとき……僕のベッドに、遊びに来るんだ」

ダズは、小児科病棟に入れるぎりぎりの年齢だったので、まわりには自分より年下しかいなかったのだ。
朝昼晩、と子供に振り回されるのは、さぞ辛かったろう。
「でも今日で、それも終わりだから」
子供に囲まれて、ダズは少し日本語がうまくなったように感じた。
相変わらずゆっくりな話し方だが、つっかえるのが少なくなった。

「そういえば、諸刃」
「何だ?」
「入院中に、言ったよね……穴に落ちた、後のこと話すって」
「ああ、そうだ。何があった?」
ダズは入院している間に、穴に落ちた後のことを何回も言おうとした。
しかし、そのたびに、子供たちに邪魔されていたのだ。
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