OTHER-D-

□苦しくなる
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夢の中の私は現実と変わらず
プロプレイヤーで
2クラス混合のデッキ構成に夢中になって
世界がなくなることすら厭わない

シャドバにしか興味がない、そういう人間だったけど





もしも、何かが少しだけ違っていたなら





あなたと
違った『形』で 並んでいたかもしれないと

現実と何ひとつとして変わらない笑顔を浮かべる、あなたの手を握り返して
そんなことを思ったのよ。










「…ね、なまえ」

「………セイヤ…?」



手を握って、これでもかという程に優しく名前を呼ばれるそれがまだ 夢の続きだと錯覚して
夢の中と同じように名前を呼べば

どうしてか、困った顔で笑う姿が目に入る。



「、…夢の続きみたいだ」

「…夢…、」



まだはっきりしない意識で、言葉を反復すると
今が『現実』であるということだけは理解できた。



「さっきね、僕となまえが恋人同士で、タクマともすごく仲が良い素敵な夢を見たんだ」

「…同じ夢、見たわ…」

「同じ夢?不思議だね」

「……」



まだ重い瞼を閉じながら、ぼんやりとした意識で
あぁ、きっと 今のは口にすべきじゃなかった とだけ思って。

それが本当に同じ夢かは分からないにしても
起きぬけに彼が困った顔をした理由には、見当がついてしまったから
引きずった眠気に身を任せて それ以上は考えないように したかったのに、








「…もし、世界にシャドバがなかったら…なまえは僕を選んでくれたのかな、」








「…な に、」

「なんてね。何か飲む?コーヒーでも買ってくるよ」

「………」



その囁くような、独り言ともとれるような問いかけが
急激に意識を覚醒させていく。


考えなければ、気付くことも痛むことも変わることも



何もない



何もないと、分かっているのに

それを許さないとでも言う様に掌に残る熱と、さっきまで見ていた夢、
そこに牙倉セイヤの問いかけが混ざりあって浮かぶのは夢の中での感情で


現実の私が夢の中のように器用な人間なら
どちらも選ぶことができたかもしれないけれど

でも現実の私は、どちらかを選ぶことしかできない
そういう、不器用な人間だから





『世界にシャドバがなかったら』





あなたを選んだかもしれないけど



シャドバがない世界できっと、私とあなたは出会わない。
だって私達の繋がりはシャドバだけだもの。



だから私が私である限り、答えは決まりきっていて
問われてしまえば間違いなく『選ばない』と口にする。





それでも、

さっきの夢で気づいてしまった。



私が、あなたを大切にしていること。
幸せになって欲しいこと。





そばに居てくれて、嬉しいこと。




涙が出そうなくらい、揺らいでしまったこの気持ちが
気づかれないうちに言い聞かせる。





「私はシャドバを選び続けるわ」






自戒を込めたその呟きに








くなる



それでも、自分で決めたことだから。この感情は 夢の中だけのものにして。










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